2024/07/16

名だたる企業のマーケティングを支援。コンバージョン獲得の秘訣とは?

インタビュー
#広告運用#マーケティング#スキルアップ#インタビュー

スマートフォンの普及に伴い、急速に進化したデジタルマーケティング領域。現在も新しいアルゴリズムが開発され、広告手法も変化し続けています。マーケティングにおいてマス広告以上に、デジタル広告を重視する企業も増えていることでしょう。 今回は、マーケターとして特にデジタル領域に精通し、大手からスタートアップまで多種多様な企業を支援してきた大前宏輔さんにインタビューを実施。PERSOL MIRAIZの少人数制クラスでは講師も勤められる大前さんに、これまでのご経験や、そこから導き出したデジタルマーケティング成功の秘訣を伺います。

与えられた役割にとらわれず、最終目的を見据える。

新卒でメディア・インターネット広告事業を行う株式会社サイバーエージェントに入社した大前さん。大手クライアントのデジタルマーケティングに携わる中で、その後にも活きる気づきが得られたと話します。

「デジタルマーケティングは、ECサイトのようなネット完結型のビジネスと親和性が高いとされてきました。ネットで物を売るなら、ネットで広告を出そうというシンプルな理由です。

ただ、私が担当していたのは、オフラインのビジネスを主力としているナショナルクライアントが中心でした。マーケティングの主軸は大々的なテレビCMや交通広告で、デジタルはあくまでサポート的な役割。
ある種、ネット起点の効果はそこまで期待されていなくて、テレビCMと同様の広告戦略をデジタル領域に展開するだけでも、クライアントのオーダーには応えられたんだと思います。

でも、マス広告の付属品のような仕事は悔しいし、それで本当にコンバージョン(最終的な成果)につながるのかも疑問でした。だから一度、極論で考えてみることにしたんです。

『このクライアントには、デジタルマーケティングは必要ないんじゃないか?』と。そうして、あえて否定的に捉えてみることで『いやいや、もっとこんなこともできるはずだよね』という議論が生まれるようになり、プロジェクトメンバーも、クライアントも『デジタルマーケティングならではの価値を出していこう』という空気になっていったんです。

ある飲料メーカーを担当していたときのこと。従来通りならば、テレビCMのクリエイティブを、デジタルでも踏襲して発信していました。
でも、それだと不特定多数の人に向けた認知度UPの効果しかありません。デジタル広告ならではの力で、店頭や自販機までユーザーを導きたいと考えました。

企画したのは、 “お悩み解決商材”として飲料をブランディングするアイデア。実例は出せませんが、例えば『肌に潤いが足りていないなら水分補給をしましょう』というような訴求ができれば、商品に対して好印象を与えて終わるのではなく、購入の動機形成まで持っていけるはず。『乾燥』や『シワ』などの検索ワードを設定して、ターゲティング広告を打つことだってできます。サイバーエージェント時代はそうやって、デジタルだからこそできることを考え続けていましたね」

デジタル媒体ならではの価値を見つめ直し、オフラインにおける購入の動機形成までアプローチする方法に辿り着いた大前さん。さらに、デジタルの魅力をこう語ります。

「少額の予算で情報の起点を作れるのも、デジタルマーケティングの力ですよね。テレビCMを打とうと思ったらそれだけで数千万円〜数億円という費用がかかりますが、デジタルなら数万円〜数十万円でも広告を打つことができます。

さらに、例えばXでのつぶやきが拡散されれば、マス広告を凌ぐ大きな影響を与えることだってできるんです。

投資金額が低ければ、当然難易度は上がりますが、ローコストでハイリターンを期待できるようになったのは、デジタルの価値の一つですよね。特に、予算に限りがあるスタートアップ企業や中小企業は、大きな期待を持たれていると思います」

ターゲット心理を突き、新規ユーザー数380%増。

サイバーエージェントから転職した株式会社メルペイやその後の株式会社YOUTRUSTでは、デジタル領域を含めマーケティング全般に携わるようになったそうです。

「メルペイでは在籍1年ほどでマーケティングマネージャーを、YOUTRUSTではCMOを任せていただきました。
新卒から振り返ると、デジタル領域から始まり、徐々にマーケティング全般に携わらせていただくようになりました。

いずれの会社でも、サービスの立ち上げという会社の命運を握るプロジェクトを任せていただき、いま振り返っても貴重な経験だったと思います」

特にYOUTRUSTではデジタル以外のタクシー広告や交通広告への投資も積極的に行い、幅広い経験を得られたと言います。首都圏で展開した交通広告はXでトレンド入りするなど、大きな話題を呼びました。

「YOUTRUSTでは、ビジネス向けのSNSを運営していました。
リアルでも関わりがある人としかつながれないという、ちょっと特徴的なSNSです。

話題になった交通広告は、その新規ユーザー獲得を狙った施策だったんです。
スタートアップでは珍しい大々的な広告でしたが、あえて有名人やビジネスインフルエンサーを巻き込まずに、すでにYOUTRUSTを使ってくれている一般ユーザーの方々を起用しました。

例えば、渋谷駅に掲示した広告には、渋谷近辺で働いている人。六本木駅なら、六本木ヒルズに本社がある人。同僚や知り合いが広告に出ていたら、自然と写真を撮ってシェアしてくれる。広告に出てくれた本人も、いちユーザーとしてYOUTRUSTをPRすることはなくても、自分が広告に出たという事実なら発信しやすいはずです。

目指したのは認知の“総量”の拡大ではなく、局所的な“熱量”を発生させること。『知り合い同士でしかつながれない』というサービス特性だからこその企画でした。
結果的に、前月同期間と比較してCPA(広告費用 ÷ 新規ユーザー数)はほぼ変わらずに、新規ユーザー数380%増を達成することができました」

幅広い層にアプローチをかけるのではなく、新規ユーザーになる見込みが高いターゲットゾーンに狙いを定めて、意図的に“内輪”での盛り上がりを生み出したこの事例。新規ユーザー獲得という本来の目的に加えて、様々な面で副次的な効果が得られたようです。

「当時のユーザーはスタートアップ企業で働く方が中心でしたが、広告に起用した方々の知り合いにも届けることができ、この施策を機にもう少し規模の大きい企業群の方々にも認知を拡大できました。

また、既存ユーザーのSNS利用が活発化したのは、狙っていた以上の成果でしたね。結果的に一般の認知度も向上したため、企業に対してYOUTRUSTを活用したリファラル採用を提案する際にも、商談がスムーズになったようです。
さらには自社の採用における応募者が増えたり、社内メンバーの士気が高まったりと、あらゆる効果を生んでくれました」

デジタルマーケターは、失敗を恐れてはいけない。

大手からスタートアップまで幅広い企業を支援してきた大前さんに、マーケターとして大切にすべきことを伺いました。

「『失敗する可能性がある』という前提を持つことでしょうか。
重要なのは、失敗を視野に入れた上で『勝負の回数』を担保することです。

マーケティングは1回きりで終わるものではありません。1回1回の小さなゴールを目指すのではなく、ときには間違った道を選んだとしても軌道修正しながら最終目的地にたどり着くことが重要。

どれだけ考え抜かれた施策でも、100%の成功はありません。デジタルマーケティングでは、逃げようがない数値結果を毎日のように突きつけられますから、『失敗することもある』という考えは精神衛生上も持っておくといいかもしれません。

ただし、もちろん「失敗してもいい」ということではありませんよ。
戦略を練る段階から失敗してもいいと考えていたら、得られる学びはほとんどないでしょう。

『これがダメだったら別の方法を試そう』という施策ほど、成功しません。
理由はシンプル。十分に練られていないからです。

マーケティングの世界ではA/Bテストを行うことがありますが、『どちらがいいか、とりあえず試してみよう』というスタンスなら、やるべきではありません。
まずは自分の頭の中でA/BテストやPDCAを繰り返して、成功した事例だけを発信する。施策の準備に、クライアントの貴重な予算を使っていいわけがありません。

自分の中で考え抜いて、成功を確信した仮説だからこそ、失敗にも価値がある。自分の仮説のどこが間違っていたのか、擦り合わせることで次に生きる経験になるはずです」

マーケターとして幅広い経験を積んできた大前さん自身も、これまで失敗の連続だったと話してくれました。

「偉そうに語ってしまいましたが、どれだけ考えても目標に達しない、想定通りにいかないことは今でも日常茶飯事です。さすがに失敗の実例は出せませんが、新卒2年目のときには任された子会社を歴代最速で潰してしまったり、クライアントから出禁を言い渡されたり…。苦い思い出はたくさんあります。

実は出禁になった理由も、失敗を受け入れられなかったことが原因でした。運用結果が想定を下回ってしまい、クライアントにどう説明しようか悩んで連絡ができずにいたんです。それを何度か繰り返してしまった結果でした。

本来なら失敗に悩むのではなく、なぜそうなったのかを分析して、挽回するための次の戦略を練らなければいけません。クライアントもそれを望んでいたはずです。せめて皆さんは、私の経験を踏み台にしてもらえたらありがたいです」

今回大前さんが登壇されるPERSOL MIRAIZの少人数制クラスでは、デジタルマーケターとして持つべきマインドセットや具体的なノウハウまで幅広く講義いただける予定です。

「私自身は先輩や上司から教わりながら、マーケターとして成長させてもらいました。でもベンチャーやスタートアップに所属する若手のマーケターの中には、そうやって教えを請えるような存在がいない環境で働かれている方もいると思います。

そうした若手マーケター、あるいはマーケターとしての転職を目指す方に、何か少しでも自分の視点からお伝えできることがあればと思ってお引き受けしました。クラスの中では、実際にデジタル広告の分析から計画立案、運用という一連の流れを実践しながら、マーケティングのスキルを身につけていただく予定です。

マーケティング計画の立て方、結果の分析の仕方など、丁寧に説明していくので、興味がある方にはぜひ参加してもらえたら嬉しいです。また、クラスを通してマーケター同士がつながれば、施策提案や実行支援などの引き出しを増やすことができるはずです」

今回の少人数制クラスは、デジタルマーケターとして知見を増やしたい方、新しいキャリアを描きたい方にとって、実践を通してノウハウを習得できる貴重な機会。ご興味のある方は詳細を確認の上、ご応募いただければと思います。

この記事に登場する人

大前 宏輔

さん

思考合同会社 代表

京都大学教育学部を卒業後、新卒で株式会社サイバーエージェントに入社。大手企業のクライアントを中心に、デジタルマーケティングの実績を積み、1年目には社内の新人賞を受賞。2年目には子会社の立ち上げも任される。2018年9月に転職した株式会社メルペイでは、マーケティングマネージャーとしてメルペイの普及に努めた。その後、2021年4月に株式会社YOUTRUSTに入社し、同年10月にCMO(最高マーケティング責任者)に就任。2024年1月に独立し、現在は自身の会社である思考合同会社で、スタートアップ企業のマーケティング戦略や組織づくりに関する支援を行っている。

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