2024/02/29

自分がやってきた仕事を否定せずに、 スタートアップに入って チャンスを伺えばUXやUIへの道は開ける。 ~30歳未経験転職 土屋尚史さん(後編)

インタビュー
#土屋尚史#デザイナー#キャリア形成

スマートフォンが生活に欠かせないものとなってから、UXデザイナー、UIデザイナーという職業が注目されるようになりました。グッドパッチはその領域を日本に広めたと言っても過言ではない存在。今回は代表の土屋尚史さんにお話を伺います。後編では、UXデザイナーやUIデザイナーに必要なスキルと、実際に転職してその職に就く方法を聞きました。


この記事に登場する人

土屋 尚史

さん

株式会社グッドパッチ 代表取締役社長

つちや・なおふみ/1983年 長野県出身。 ウェブディレクターを経て、サンフランシスコに渡りデザイン会社でスタートアップ支援に携わる。2011年9月に株式会社グッドパッチを設立。ミッション「デザインの力を証明する」を掲げ、様々な企業の事業戦略やソフトウェア開発を支援。2020年6月、デザイン会社として初の東証マザーズ市場上場。ピクサーに大きな影響を受け、本社の打ち合わせ室はピクサー作品に登場するキャラクターの名前が付けられている。2023年6月、株式会社丸井グループ執行役員CDXO(チーフデジタルトランスフォーメーションオフィサー)に就任。

SNS・メディア

UXデザイナー、UIデザイナーに向いている人、向いていない人

向いている人:自分の足で生の声を集めるバイタリティのある人/パターン認知が得意な人
向いていない人:デジタルプロダクトが嫌いな人

アプリを使い倒すことがスキルを身につける近道


前半ではUXデザイナーとUIデザイナーが生まれた背景と、グッドパッチにおける仕事内容をお聞きしました。

転職するにあたり、求められるスキルも知っておきたいものですよね。「まずはとにかく多くのアプリをインストールして実際に使うこと」と話します。

「UXデザイナーはリサーチや企画立案が主ですから、インタビューや観察技術などの本を読む。UIデザイナーはインターフェイスをつくりますから、Appleが公開している「Human Interface Guidelines」をまずは読み込む。そんなふうに知識を身につけることはできます。でもそれらは前提知識であって、仕事で求められるスキルかというと別の話。新入社員にも言っていることですが、有名なアプリやサービスをとにかく使いまくると、自ずと必要なスキルが身に付きます。UXでもUIもここは変わりません。」

もちろんただ使い込めば良いというわけではなさそうです。

「そのサービスがどういう意図でUXやUIを実装しているかを考えながら使います。デジタルプロダクトは使っていると、ある日突然ボタンのデザインが変わることがあります。その背景には必ずなにかしらのユーザーからのフィードバックがあるなど、ビジネスロジックが存在するんですね。その意図を想像して目の前のインターフェイスの変化を見ると、それだけで勉強になる。僕のiPhoneには1000以上のアプリが入っていて、今でも毎日使いまくっていますよ。」


つまり必要なスキルは、たくさんのアプリやサービスに1ユーザーとして触れながら、ビジネス的な視点で分析することと言えそうです。

「それを日常的に繰り返していると、パターン認知が生まれてきます。こういう課題に対してはこういうUIを実装した、最近の良いとされるサービスにはこういうUXが共通していそうだ、など自分なりに規則や意味を言語化できるようになり、それがUXデザインやUIデザインには欠かせないスキルになっていくんです。」

UXデザイン、UIデザインの仕事の第一歩は、人に話を聞きに行くこと


デジタル畑でもデザイン畑でもない人からすると、未経験で挑戦するにはハードルが高いと思える仕事かもしれません。しかし、土屋さんは「自分を低く見積もる必要はない」と言います。

「まず前提として、今まで何をしてきたかというのはすごく重要です。たとえば僕は営業職をしていたこともありますけど、相手のニーズを聞き出して、企画やソリューションで解決するなど、デザイナーとの共通点は多いです。だから、今までの経験が無駄になることはないと自覚してほしいですね。」

その上で、UXデザイナーとUIデザイナーでは求められることが少し異なるようです。

「UXデザイナーは最終的なユーザーインターフェイスをつくるところまでは担当しないので、UIデザイナーに比べると目指しやすいです。UIデザイナーはツールやグラフィックの理解が必要になるので、人によっては就職準備として専門学校に通うこともありますね。」

そして未経験で新しい業界に飛び込むからこそ、やってほしいことがあると言います。

「先ほどお話ししたように色んなサービスを使いまくっていただくのは当たり前として(笑)、著名なデザイナーにXなどのSNSでDMを送って話を聞きに行ってほしいですね。UXデザイン、UIデザインという仕事を理解するために足を使うということですけれど、それを1人じゃなく、10人目指してやってみる。そこで聞いた話をまとめると自分なりの「UXには、UIにはこれが大事なんじゃないか」という共通点や理想像が見つかっているはずです。実はこれUXデザインの仕事そのもので、就職前からUXデザインの思考を養うのにとても役に立つと思いますよ。」

遠回りだと思わずに、今までの仕事を活かした職種から始めてみる


デザイナーという肩書きがついているのを見ると、制作会社に行くのが良いのではと思っていましたが、土屋さんはちょっと違う角度からアドバイスをしてくれました。

「僕はウェブディレクターの経験もあるので分かるのですが、ウェブサイト制作とデジタルプロダクト制作は根本的に異なる仕事。もちろん広告制作も違います。ですから、制作会社を探すというよりは、UXやUIの求人が多いスタートアップから見ていくのが良いのではないでしょうか。」

そしていきなりUXやUIのデザイナーになるよりも、これまでやってきた職種に近いところから仕事を始めてみるのが良いそうです。

「UXやUIにしっかり向き合っている会社ほど、専門職として扱っているからこそ30歳未経験のハードルは高いと思います。だからたとえばプロジェクトマネージャーやカスタマーサクセスから入って、社内のUXデザイナーやUIデザイナーの仕事を近くで見てみる。そして、担当している仕事にきちっと取り組んでいれば、社内からの評価が上がって、新しい職種にチャレンジさせてくれるはずです。グッドパッチでもバックオフィスで頑張っていた人が今ではUXデザイナーとしてバリバリ活躍しています。繰り返しになってしまいますが、30歳から転職するなら、それまでやってきたことを生かしながら、機を伺うのが最短ではないでしょうか。」

前編はこちら


カメラマン:Kazuharu Igarashi ライター:koke1


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