2024/05/20
AI人材とは、一般的にディープラーニングや機械学習といったAI活用に関する知識を持ち、AIシステムの構築や運用、改善を行う人のことを指します。この記事では、AI人材について、必要とされるスキルや職種の例について解説します。
AI人材とは、ディープラーニング等の機械学習やAI活用に関する知識を持ち、AIシステムの構築や運用、改善を行う人材のことです。DXが進んでいる現代では、AIの活用がビジネスの場で進んでおり、AIシステムを導入したり構築したりすることができるAI人材は欠かせない存在となってきています。
実際に、世界のリーダーが集まってグローバルな問題について扱う世界経済フォーラムが公表した「仕事の未来レポート2023」※1では、今後急成長する職種として、AI・機械学習スペシャリストが挙げられています。さらに、同レポートでは、AIと機械学習が産業の形を継続的に変革していくことで、100万人の雇用が増加すると予測しています。
また、IT人材やデジタル人材といった言葉もあります。IT人材とは、IT(情報技術)業界の全般的な知識を持ち、ITシステムの開発、運用、管理などができる人材のことを指します。デジタル人材とは、デジタル技術を用いて企業に価値を提供できる人材のことです。中小企業庁の2023年版「中小企業白書」では、(独)情報処理推進機構(IPA)が刊行した「DX白書2021」での人材分類などを参考にし、デジタル人材を「デジタル化の戦略を推進する人材」と「デジタル化の技術を担う人材」の2つに分類しています。デジタル人材は、DXの推進を担うことになるので、専門知識に限らず、DXに向け組織を牽引するリーダーシップや、実行力、コミュニケーションスキルなどがより求められることが特徴です。
この記事ではai人材の需要が高まっている理由や、職種例、AI人材に必要なスキルなどについて解説します。
※1 出典:「仕事の未来レポート2023(The Future of Jobs Report 2023)」(The World Economic Forum)
では、なぜAI人材の需要が高まっているのでしょうか?まずはAI人材が必要とされている理由についてご紹介します。
AI人材が必要とされている背景として、AI技術が発展していることが挙げられます。近年、業務の効率化やロボットのAI活用など、AI技術の発展により、多くの業界でAIが導入され始めています。最近では、画像や文章などの生成AIの発達も注目を集めており、今後もAIの技術は、さらなる進化を遂げることが予想されます。このようにAI技術が発展すればするほど、AIを使いこなせる人材が必要となるのです。
AI技術が発達することによって、AIに関連した新しい職種も登場し始めています。AIの進化スピードを考慮すると、デジタルストラテジストや、AIエンジニアといった職種のニーズも今後拡大していくでしょう。
このように、AIに関して豊富な知識が求められている一方で、AI人材が不足しているのが現状です。「DX白書2023」では、AIを導入するに際して、最も多い課題は「AI人材の不足」、次に「自社内におけるAIへの理解不足」とされています。
AIに関する知識や技術を身に付けるためには、プログラミングスキルや統計学、数学などの幅広い知識が必要であるため、人材育成が必要です。しかし、学校教育や企業のAI人材育成プログラムの整備がAIの発達に十分に追い付いていないという現状があります。加えて、日本においては少子高齢化や人口減少といった問題も重なり、AI人材の不足問題がより顕在化する可能性が高いでしょう。
AI人材は以下の3つのタイプに分類されます。それぞれ順に見ていきましょう。
AI研究者は名前の通り、AIについての研究を行う人材です。AI研究者は、AI技術の進化の促進を担う役割で、専門的な知識や深い知見をもとに、AI技術の開発に携わります。AI研究の分野は幅広く、実用化されているものから先端技術として研究されているものまでさまざまあります。
AIエンジニアとは、AIを実際の業務で活用できるように仕組みやシステムを形作ったり、蓄積されたデータの解析を行ったりする職種です。AIエンジニアは、AIを業務に導入するために必要不可欠な人材であるため、企業にとって重要な人材です。実務にあたるには、ディープラーニング等の機械学習などの詳しい知識が必要であり、今後も特に需要が高まる職種と考えられます。
AIプランナーは、会社の業務改善・課題解決のために、AIを用いた企画の提案や関連プロジェクトの進捗管理を行うAI人材です。AIの導入はあくまで課題解決における1つの手段であり、ただ導入すればよいというわけではありません。そのため、企業の課題を本質的に理解し、解決の手段としてAI導入までの道筋を提案できるAIプランナーの存在は、企業にとって必要不可欠です。
また、AIプランナーは、AIを利用する側の視点から、AIエンジニアに適切な指示を出す役割も果たします。そのため、AIを利用する側の意見や要望を適切にAIエンジニアに伝え、実現に向けてすり合わせをするコミュニケーション能力も求められます。
ここからはAI人材の具体的な職種について、下記5つをご紹介します。
機械学習エンジニアはAIエンジニアのなかでも、機械学習のアルゴリズムの開発、導入、実装に特化した職種です。機械学習にはデータが必要不可欠であるため、データアナリストやデータサイエンティストといった職種の要素を含む場合もあります。機械学習エンジニアは、プログラミングスキルはもちろん、データベースやクラウドなどの専門知識も求められます。
自然言語処理(NLP :Natural Language Processing)とは、人間が普段使用する言語をパソコンが解釈し、処理できるようにすることで、自然言語処理エンジニアはこのシステムを開発・導入します。最近の自然言語処理技術が応用されている事例では、文字を入力すると瞬時に自然な対話形式で答えてくれる、OpenAI社の「ChatGPT」が挙げられます。今後も進化が期待される分野であり、需要も高まっていくといえるでしょう。
プロンプトエンジニアは、自然言語処理のモデルにおいて、AIから最適な解答を引き出すために言語モデルへの命令や指示を開発・改善することが主な役割です。プロンプトとは、AIに出す指示や命令のことで、チャットボットにおける、利用者が入力するテキストや、音声認識サービスにおける利用者の音声などがそれに当たります。
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データサイエンティストは、機械学習や統計解析を通してデータ分析を行うことで、ビジネス上の課題を解決に導くのが主な仕事です。AIの発達に伴い、ビッグデータの活用がより一層重視されるなかで、データサイエンティストの活躍の場も広がっていくでしょう。
デジタルストラテジストとは、データの収集や分析を通して、デジタルマーケティングの戦略を立案する職種です。データ解析の能力だけでなく、課題解決能力やマーケティングの知識も必要とされます。
ここまでAI人材の職種についてご紹介してきましたが、こういった職種に就くためには、どのようなスキルが必要になるでしょうか?今回は主なスキルとして6つご紹介します。
プログラミングスキルは、AIエンジニアやデータサイエンティストなどに特に必要なスキルです。AIはプログラミングによって作られたアルゴリズムに基づき動作するため、AI開発において最も重要なスキルといえるでしょう。AI分野では、主にPythonが使われることが多いため、AI人材に必要なスキルとしてはまず、Pythonを習得することがおすすめです。
AI技術の活用においては、ビッグデータが必ず関わるため、データサイエンスのスキルも重要です。統計に関する知識や、データを集計するスキル、データの規則性を見つけ出すための統計モデリングのスキルなどが求められます。
ディープラーニング・機械学習に関する知識もAIを活用する人材に求められることが多いでしょう。データを分析することでルールやパターンを見いだす、機械学習の仕組みについてはもちろん、どのような事例で導入されているか、どのように進化しているかなど、日々進化する機械学習に興味を持ち、知識を更新していくことも求められるでしょう。
AIをビジネスへ導入するにあたり、法律的な知識も重要です。たとえば生成AIの導入において、著作権を侵害していないか、プライバシーに関わる情報がどう扱われるのかといった点が問題視されています。急速に発展・普及するAIに対して、今後新しく規制される可能性は高いため、法律の知識についても最新情報を追っていくことが大切です。
論理的思考力は論点を整理し、筋道を立てて物事を考える能力です。AIやビッグデータの分析の際にはデータごとの関係やパターン、規則性などを読み取る力が必要であり、これは論理的思考力がベースで必要です。また、AIのアルゴリズムや仕組みを理解することも、論理的思考力が必要でしょう。
データやプログラミングを扱う以上、統計学や数学に関する知識は欠かせません。統計学や数学のスキルが身に付いていないと、データを集めても十分な解析ができず、機械学習のメカニズムも理解が難しいため、統計学・数学のスキルは、論理的思考力と併せてAI人材におけるベースのスキルといえるでしょう。
ここまでAI人材についてご紹介してきました。DXが進む現在において不足しているAI人材は、今後も需要が増していくと考えられます。AI人材に求められるスキルを習得するために、注目を集めているのがリスキリングです。
リスキリングとは新しい業務や職業に就くために、今の仕事とは異なる領域や職種のスキルを身に付けることです。リスキリングは、企業が主体となって自社の従業員をAI人材として育成する研修制度やプログラムを整えている企業もあります。ご自身の所属する会社でリスキリングの制度がある場合は挑戦してみるとよいでしょう。
所属する会社に学ぶ環境がない場合は、個人でリスキリングに取り組みましょう。たとえば、働きながらビジネススクールに通ったり、無料の動画や書籍を用いて学習したりと、さまざまな勉強方法があります。自分に合う学習方法を見つけてくださいね。
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『PERSOL MIRAIZ』は、はたらくすべての人が利用できる無料のリスキリングサービスです。本来は高額なスキルの学習やキャリアカウンセリングを、誰でも気軽に始められます。
さん
一般社団法人ジャパン・リスキリング・イニシアチブ 代表理事 チーフ・リスキリング・オフィサー / SkyHive Technologies 日本代表
早稲田大学政治経済学部卒業後、1995年に富士銀行(現みずほ銀行)入行。2002年、グローバル人材育成を行うスタートアップをNYにて起業。2011年、米国の社会起業家支援NPOアショカの日本法人設立に尽力。2021年、日本初のリスキリングに特化した非営利団体、一般社団法人ジャパン・リスキリング・イニシアチブを設立。日本全国にリスキリングの成果をもたらすべく、政府、自治体向けの政策提言および企業向けのリスキリング導入支援を行う。著書『自分のスキルをアップデートし続ける「リスキリング」』(日本能率協会マネジメントセンター)は「読者が選ぶビジネス書グランプリ2023」イノベーター部門賞を受賞。2023年9月に続編『新しいスキルで自分の未来を創る「リスキリング実践編」』を上梓。
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