2024/04/11
シンギュラリティとは、日本語では技術的特異点と訳され、人間の知性と同じレベルの人工知能(AI)が生まれる時点を意味します。この記事では、シンギュラリティの到来が予測されている理由や社会に及ぼす影響、いつ起こるといわれているのかについて詳しく解説します。
シンギュラリティ(技術的特異点)とは、人間が持つ知能と人工知能(AI)の臨界点を指す言葉です。自律的な学習が可能な人工知能が改良を繰り返すことで、人間を超える優れた知能を持つようになるのではないかと考えられており、その転換点がシンギュラリティといわれているのです。米国の発明家レイ・カーツワイル氏は、シンギュラリティを「人工知能が人間の知性と融合する時点」と定義しています。シンギュラリティはあくまで仮説であり、実際に起こるかは分かりません。
シンギュラリティが起こることで、「人間の活躍の場が失われてしまうのではないか?」「どのような影響があるのだろうか?」と思う方もいるでしょう。今回は、シンギュラリティが社会に及ぼす影響からシンギュラリティへの備え方まで詳しく解説します。
うちの業界も今後AIの影響を受けそうだから勉強しないとな…。シンギュラリティは2045年っていわれてるけど、実現すると思う?
(シンギュラリティ…?なんか強そう…)
シンギュラリティは、AIの知能が人間の知能を超える転換点を指す言葉だよ。あくまで仮説だけど、2045年に到来するのではないかといわれているんだ。
実際にシンギュラリティが起こる時期については研究者によって説が異なりますが、最もよく知られている時期は2045年です。一方で、シンギュラリティは来ないという意見もあります。ここからは、シンギュラリティの到来について、肯定派の意見と否定派の意見をそれぞれ見ていきましょう。
米国のカーツワイル氏は、自身の著書「The Singularity Is Near」のなかで、2045年にシンギュラリティが到来すると予測しており、これは「2045年問題」として知られています。また、オックスフォード大学の研究者であるスチュアート・アームストロング氏は、2012年の「シンギュラリティ・サミット」で、シンギュラリティの到来時期は2040年頃であると提唱しました。さらに、神戸大学の名誉教授である松田卓也氏は、2030年頃に訪れるのではないかと唱えています。
上記のように、シンギュラリティ到来の時期についてさまざまな説がありますが、いずれにせよ近い将来に起こる可能性があると数々の学者が推測しています。
次に否定派の意見を見ていきましょう。スタンフォード大学の教授であるジェリー・カプラン氏は、シンギュラリティは到来しないと主張する1人です。ロボットには独立した目標や欲求がないため、機械的な意味では知能を持っているが、その知能はあくまで人間のためにある能力に過ぎないという見解を示しています。つまり、人工知能と人間を同一視するという考えを否定していることになります。
なぜシンギュラリティが到来するといわれているのでしょうか?そこには主に以下の2つの理由があります。
それぞれの法則について解説します。
ムーアの法則とは、1965年にゴードン・ムーア氏によって提唱された「半導体の性能が18か月で2倍になる(半導体の集積数が2倍になる)」という経験則です。仮にこの法則が正しいとすると、半導体の性能は指数関数的に上がり、近い将来、ほぼ確実に人工知能が人間の能力を超えることになります。
収穫加速の法則とは、レイ・カーツワイル氏が提唱する、技術が直線的でなく指数関数的に進化しそのスピードがどんどん速くなる法則です。技術が進化することで、新しいイノベーションが生まれるスピードも加速し、それが続くことでシンギュラリティが実現するのではないかとされています。
シンギュラリティはあくまで仮説ではありますが、もしシンギュラリティが実現したら、世の中はどのように変化するでしょうか?今回は、シンギュラリティの到来が及ぼす影響を、下記3つの面からご紹介します。
シンギュラリティの到来によって雇用にもたらされる影響は、大きく分けて新しい仕事の誕生と既存の仕事のAI化です。
世界経済フォーラムによる「仕事の未来レポート2023」※1では、AIと機械学習のスペシャリストが、急成長している職種一覧の上位にランクインしています。主にテクノロジー関連の職業が急成長するとされ、AIと機械学習が産業のあり方を継続して変革することで、100万人の雇用が増加すると予測されています。
一方、シンギュラリティが起こることで懸念される問題は、既存の仕事がAIに取って代わられることです。ゴールドマン・サックス・グループが2023年に発表した調査※2によると、約3億人分の仕事がAIによって自動化される可能性が高いとされています。
また、2015年に株式会社野村総合研究所がオックスフォード大学との共同研究で発表した研究※3では、「日本の労働人口の約49%が技術的には人工知能やロボット等により代替できるようになる可能性が高い」と推測しました。この研究では、人工知能やロボットによる代替可能性が高い100の職業を発表しており、下記が具体例です。
上記に挙げた仕事は、AIが得意とする作業の反復や情報の学習によって習得できるものが多く見受けられます。マニュアル化できる単純作業は、効率化が優先されAIやロボットが担っていく可能性が高いと予測できます。
一方で、同調査では、人工知能やロボット等による代替可能性が低い100の仕事として下記が挙げられています。
人間の想像力や柔軟性が求められる仕事や、人間の心に寄り添う仕事、医療関係者などは、人工知能に代替される可能性が低いといえるでしょう。
※1 出典:「仕事の未来レポート2023(The Future of Jobs Report 2023)」(The World Economic Forum)
※2 出典:「Generative AI could raise global GDP by 7%」(Goldman Sachs)
※3 出典:「日本の労働人口の49%が人工知能やロボット等で代替可能に~601種の職業ごとに、コンピューター技術による代替確率を試算~」(株式会社野村総合研究所)
仮にシンギュラリティが到来すれば、AIが人類の仕事を代替するようになり、多くの人の雇用がAIに代替される可能性があります。そのような状況に対して、国民の最低限の生活を保障するために、一定の金額を支給する「ベーシックインカム」が導入されるのではないかと考える説もあります。ただし、ベーシックインカムを導入するには、膨大な財源の確保が必要であるだけでなく、労働意欲を低下させるといった恐れもあるため、実現はそう簡単ではありません。
シンギュラリティは、医療や身体の変化にまで影響をもたらす可能性もあります。たとえば、AIが臓器を作れるようになることで、人体の一部を人工化できる可能性が高まるという説があります。また、脳の中枢をコンピューターにつなげ、意識をコンピューター上にアップロードすることもできるようになるかもしれません。シンギュラリティが到来すれば、寿命を伸ばしたり、これまで治せなかった病気を治したりできる可能性があるともいわれています。
いずれにせよ、シンギュラリティはあくまで仮説であり、及ぼす影響も未来の予想に過ぎないということは念頭に置いておきましょう。
ここまで、シンギュラリティが起こると予測されている時期や、シンギュラリティの影響について解説してきました。2030年頃には、シンギュラリティの到来に先立って、人々の生活や社会が変化する「プレ・シンギュラリティ」が起こるともいわれています。
AIの発展によって今の仕事が奪われてしまうのではないか?と不安にならずに、AIをいかに活用して新しい価値を生み出していくかが大切です。一部の仕事は需要が減っていくという予測がある反面、新しく生まれる仕事もあります。常に最新の動向を追いかけ、学び続けることが大切です。
さきほどもご紹介した世界経済フォーラムによる「仕事の未来レポート2023」によると、2023年~2027年の労働者にとって最も重要なスキルは、分析的思考と創造的思考とされており、トップ10のスキルは以下の通りです。どのようなスキルを身に付けるべきか迷ったら、このようなデータを参考にしてみるのもよいでしょう。
※出典:「The Future of Jobs Report 2023」(World Economic Forum)
『PERSOL MIRAIZ』は、はたらくすべての人が利用できる無料のリスキリングサービスです。本来は高額なスキルの学習やキャリアカウンセリングを、誰でも気軽に始められます。
ハッシュタグから記事を探す
カテゴリから記事を探す
トップランナーおすすめの良書
トップランナーが見た動画
インタビュー・対談
PERSOL MIRAIZのリスキリングコンテンツ
トップランナーと学ぶ・作る・出会う - あなたのキャリアを前進させる無料クラスとイベント
トップランナーから、仕事に直結するスキルを学ぶ
トップランナーのマインドや学習方法を知り、キャリアを成長させる