2024/02/28
第4次産業革命とは、IoTやビッグデータ、AIの活用によってもたらされる技術革新のことで、今後の経済活動やライフスタイルなどに、さまざまな変化をもたらすと予想されています。この記事では、変化の詳しい内容やこの先求められるスキルについて解説します。
第4次産業革命とは、一般的にIoT(モノのインターネット)やビッグデータ、AI(人工知能)の活用を中心とした技術革新を指します。IoTは、家電や自動車などのあらゆるモノをインターネット(あるいはネットワーク)に接続することで、モノを使用した際の情報がデータとして収集される仕組みのことです。IoTをはじめとしたシステムによって集められたデータは、ネットワーク上で「ビッグデータ」として集積され、新たな付加価値を生み出すために役立てられます。第4次産業革命下では、そのビッグデータをもとにAIが機械学習を行い、一定の判断を下すことが可能になりました。内閣府によると、このような技術革新により、下記の3つが新たな変化として特に期待されるようになったとされています。※1
第4次産業革命によって上記が実現した場合、今後必要とされる職種やスキルにも大きな変化が生じることが示唆されます。株式会社野村総合研究所は、オズボーン准教授およびフレイ博士との共同研究により、日本の労働人口の約49%が就いている職業において、機械に代替可能との試算結果を得たと公表しました。※2 つまり、現在就いている仕事が今後も同様の形で存在するとは限らないのです。
そのため、社会人のスキル獲得として「リスキリング」や「リカレント教育」の重要性が高まっています。リスキリングやリカレント教育についてより詳しく知りたい方は、ぜひ以下の記事をご参照ください。
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※1 出典:白書等(経済財政白書、世界経済の潮流等)日本経済2016-2017 第2章 第1節 第4次産業革命のインパクト(内閣府)
※2 出典:日本の労働人口の49%が人工知能やロボット等で代替可能に(野村総合研究所)
第4次産業革命は多くの産業に多大なインパクトを与えることが予想されます。ここでは、特にそのインパクトが大きいと予測される下記3つの産業について、例を挙げながら詳しくご紹介していきます。
製造業や流通業においては、特にB to C向け分野で消費者の嗜好といったデータをもとに、サプライ チェーンを最適化する形に業界構造が変化していくでしょう。実際のサービスの例としては、製品の稼働状況に関するデータを収集し活用した保守・点検サービスが挙げられます。
また、総務省の「情報通信白書 第4次産業革命がもたらす変革」によると、製造業・流通業分野において、今後、従来の大量生産(マス・プロダク ション)から、開発や生産のスピードを重視した「マス・ラピッド生産」や、 大量生産に近いコストを保ちつつ、個人の嗜好に合わせたオーダーメイドの製品を提供する「マス・カスタマイズ生産」を中心に変化していくと予測されています。※3
さらに、消費者の嗜好を取り入れるためにAIを活用した消費者向けサービス(AIコンシェルジュ サービスなど)の登場も想定されます。このように、第4次産業革命による変化は、開発・生産過程の効率化にとどまらず需要に対する新たな価値提供の可能性も創出するのです。
※3 出典:情報通信白書 第4次産業革命がもたらす変革(総務省)
金融の分野では、第4次産業革命のもと、フィンテック(FinTech)が発展しています。金融庁金融審議会(2015)によると、「FinTech とは、金融(Finance)と技術(Technology)を掛け合わせた造語であり、主に、IT を活用した革新的な金融サービス事業を指す」としています。※4 これによって、企業への金融サービスだけでなく、個人投資家や新規事業を立ち上げるベンチャー企業などにも最適なサービスの提供が進んでいます。
フィンテックの具体例としては、スマホ決済やオンライン上で不特定多数の人々から資金を集めることができるクラウドファンディングや、AIによる資産運用サービス提供などが挙げられます。 また、今後は、ブロックチェーンをはじめとした新たな技術を活用することで、取引の低コスト化、データ改ざんの防止、システムに不具合が生じても維持が可能になる(可用性が高まる)などの効果が期待されています。※5
また、世界経済フォーラムが発表した「分散化された未来を築く価値原則(Foundational Values for a Decentralized Future)」の前文でも、「第4次産業革命の支柱であるブロックチェーンテクノロジーは、公共セクターと民間セクター全体にわたる根本的な改善だけでなく、セキュリティや説明責任、透明性が高いガバナンスモデルやビジネスモデルを世界中で実現する」と記載されており、ブロックチェーン技術が第4次産業革命における主要な技術であることが分かります。※6
※4 出典:金融グループを巡る制度のあり方に関するワーキング・グループ報告~ 金融グループを巡る制度のあり方について ~(金融庁 金融審議会)
※5 出典:ICT によるイノベーションと新たなエコノミー形成に関する調査研究(総務省)
※6 出典:Foundational Values for a Decentralized Future(The World Economic Forum)
医療・ヘルスケア分野は、政府の成長戦略である「未来投資戦略2017」において、AIの基盤整備やデータ利用などの観点から重要な分野として言及されています。この分野における、第4次産業革命下での技術革新の例としては、ウェアラブル端末などのIoT によるデータ収集を活用した健康・医療サービスの実現や、ロボットやセンサー技術を活用した介護サービスの提供、ゲノム解析データや臨床データを一元管理することによる早期診断や新薬開発の実現などが挙げられます。
また、AIやIoT、ビッグデータなどの発展に伴い、患者の受診や治療をAIが対応する「AIホスピタル」が既に実現しつつあります。AIホスピタルの実現によって、医師や看護師などの医療従事者に時間的な余裕が生まれ、人間にしかできないより高度な仕事に専念できることが期待されています。
産業革命は長い経緯を経て発展してきました。ここでは、それぞれの産業革命が社会に及ぼした影響についてご紹介し、第4次産業革命に至るまでの歴史を振り返ります。
第1次産業革命は、18世紀後半にイギリスを中心として起こった軽工業の機械化を指します。この革命で起こった技術革新は、紡績機の発明と蒸気機関の改良が代表的です。 イギリスでは、紡績機の発明により織物加工の大量生産が可能になりました。また、この時期の汽車や蒸気船などの輸送機関の発達が、製品の大量輸送を実現させたといえます。 このような産業革命の動きはやがて、イギリスだけでなく世界中に広がりました。第1次産業革命は人々の働き方を、それまでの手工業から機械化させたことで、近代における大量生産・大量輸送を当たり前にすることに寄与したといえるでしょう。
第2次産業革命は、19世紀末から20世紀前半にかけての重工業の効率化を指します。 この当時、主要エネルギーが石炭から石油や電力へと代わったことで、イギリスやアメリカを中心とした欧米諸国で重工業の発展が加速しました。 より強い動力の普及によって、製造業の大量生産化が大きく進み、資本家は巨額の富を手にしていきました。日本の産業革命が起こり、製造業全般の近代化が急速に進んだのも、この第2次産業革命の時期です。
第3次産業革命は、20世紀半ばから後半にかけて起こった、コンピューターの登場による単純作業の自動化を指します。1946年に米国で開発された真空管式のコンピューターが、1970年代にモノづくりの現場でも普及するようになると、それまで人間が行ってきた単純作業をロボットが代替する働き方へと変わっていきました。具体的には、第3次産業革命によって、運搬・溶接・検査などの業務を産業用ロボットが行うようになったことが例として挙げられます。また、インターネットの登場もあり、働き方は大幅に効率化しました。
第4次産業革命によって、これまで人間が行ってきた仕事のうち、AIやロボットなどのテクノロジーに代替されるものが出てくる一方で、そのテクノロジーの発展によって新たに生まれる仕事もあると予想されています。実際、2023年4月30日に発表された仕事の未来レポート2023では、「2027年までに約23%の仕事が変化し、6,900万件の新たな仕事が創出、8,300万件の仕事が失われる」と予測されています。※7 こうした変化に伴い、労働市場で求められる、需要の高いスキルも変化していくでしょう。
では、第4次産業革命において求められるスキルとはどのようなものなのでしょうか?ここでは、「第四次産業革命スキル習得講座認定制度」や「仕事の未来レポート2023」の内容をもとに、今後需要が増えると予想されるスキルをいくつかご紹介します。
※7 出典:仕事の未来レポート2020(The Future of Jobs Report 2023)(The World Economic Forum)
経済産業省は第4次産業革命の動向を受けて、「第四次産業革命スキル習得講座認定制度」を発足しました。第四次産業革命スキル習得講座認定制度では、社会人のスキルアップを応援するために、経済産業省が民間企業によって提供される社会人向けのIT・データ分野を中心とした高度な教育訓練講座を認定しています。この制度を活用すれば、受講費の最大70%の給付金を政府から受け取ることができ、自己負担を最小限に抑えながらスキルアップを目指すことが可能です。
下記3つが、この制度の認定対象分野です。これらの分野は、第4次産業革命下において特に必要とされるスキルであるという政府の見解が読み取れます。
※1、2について、基礎・初級のITスキルは除きます
先述したように第4次産業革命以降は、仕事内容や求められるスキルが大きく変化していきます。世界経済フォーラムが2023年4月30日に公表した「仕事の未来レポート2023(The Future of Jobs Report 2023)」では、今後5年間で仕事とスキルがどのように進化するかの調査結果に基づいて、未来の仕事に必要なスキルが以下のようにまとめられました。※7
トップ2つの「分析的思考」「創造的思考」は、認知スキルと位置付けられ、複雑な問題解決において必要なスキルです。第4次産業革命に伴って、特にAIとビッグデータといった技術リテラシーの重要性が非常に高まったことで、上位にランクインしました。
このようなランキング結果を参考に、ご自身が鍛え上げていくスキルの選定をしてみるのもよいでしょう。
※7 出典:仕事の未来レポート2023(The Future of Jobs Report 2023)(The World Economic Forum)
第4次産業革命に伴い、働く個人に求められるスキルも変わりつつあります。AIやロボットの発達によって仕事がなくなるといった悲観的な側面が強調されることもありますが、新たな雇用が創出されるともいわれています。AIやロボットの発展によって、人間がやらなくてもよい仕事が増え、より創造的な仕事や楽しい仕事に専念できるようになるかもしれません。第4次産業革命による変化をチャンスと捉え、これから先どのように働きたいか、どのような仕事をしていきたいかを見つめ直し、必要なスキルの習得に励みましょう!
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さん
一般社団法人ジャパン・リスキリング・イニシアチブ 代表理事 チーフ・リスキリング・オフィサー / SkyHive Technologies 日本代表
早稲田大学政治経済学部卒業後、1995年に富士銀行(現みずほ銀行)入行。2002年、グローバル人材育成を行うスタートアップをNYにて起業。2011年、米国の社会起業家支援NPOアショカの日本法人設立に尽力。2021年、日本初のリスキリングに特化した非営利団体、一般社団法人ジャパン・リスキリング・イニシアチブを設立。日本全国にリスキリングの成果をもたらすべく、政府、自治体向けの政策提言および企業向けのリスキリング導入支援を行う。著書『自分のスキルをアップデートし続ける「リスキリング」』(日本能率協会マネジメントセンター)は「読者が選ぶビジネス書グランプリ2023」イノベーター部門賞を受賞。2023年9月に続編『新しいスキルで自分の未来を創る「リスキリング実践編」』を上梓。
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