2024/03/07
キャリアアップやスキルアップなどのために、社会人でも勉強を始めたいと思う方は多いのではないでしょうか?そこで、仕事でなかなか時間の取れない社会人でも始められる勉強法や、勉強におすすめのジャンルについてご紹介します。
総務省統計局が発表した令和3年社会生活基本調査※1によると、有業者の研修や学業を除いた「学習・自己啓発・訓練」に充てられた平均時間は、週全体でたったの7分です。この調査結果から、忙しい社会人にとって勉強の時間を確保することはなかなか難しいことが分かります。
しかしこの調査では、年収が多い人ほど週全体当たりの「学習・自己啓発・訓練」に対する時間が多いことも示されています。具体的な数字で見てみると、年収200万~299万円の人は平均5分であるのに対し、年収1,500万円以上の人は平均20分となっています。
働きながら時間を確保し、勉強を継続するのは難しいことです。それでも勉強することは、仕事でより活躍したり、キャリアの選択肢を広げたりすることにつながるでしょう。そこでこの記事では、時間がないなかでも勉強したい社会人の方に向けて、より詳しい勉強のメリットやおすすめの勉強法や勉強ジャンルを解説します。
※1 出典:令和3年社会生活基本調査(総務省統計局)
そもそも、社会人でも勉強が必要といわれるのはなぜでしょうか?その背景はさまざまですが、ここでは社会構造の変化に焦点を当てて考えてみます。
時代の移り変わりが激しい現在、今携わっている仕事を今後も続けられるとは限りません。野村総合研究所は、今後10~20年の間に、日本の労働人口のうち49%がAIやロボット等で代替可能になると発表しています。※2 実際その通りになるかどうかは分かりませんが、それでもこのような社会の変化に伴い、企業が働く個人に求める知識やスキルは変化していきます。その変化に対応するためには、勉強が必要となるでしょう。
また、今は「人生100年時代」といわれ、健康寿命が伸びていることで働く期間も長くなっています。その一方で、社会の変化のスピードは日に日に増しており、定年を迎える前に自分のスキルが陳腐化してしまうケースも増えるでしょう。そうでなくとも、新たなテクノロジーやトレンドを知り、対応することが高頻度で求められることになります。以前よりも長い期間、変化の激しい社会で活躍し続けるためには、学び続ける必要性が増しているのです。
このような社会構造の変化に伴い、現在ではリスキリングやリカレント教育に注目が集まっています。リスキリングとは、今行っている仕事とは異なる職種や領域に必要なスキルを身に付け直すことを指します。一方で、リカレント教育とは学校教育を終え、社会に出た後にも必要に応じて教育を受け、教育と就労のプロセスを繰り返すことです。
政府もリスキリングやリカレント教育といった社会人の学びを推進しており、支援が強化されています。東京都では「DXリスキリング助成金(中小企業人材スキルアップ支援事業)」が設けられ、厚生労働省は「人材開発支援助成金」、「事業展開等リスキリング支援コース」といった支援制度を設けました。どれも企業向けにはなりますが、今後学び直しがさらに重要視されることで個人向けの支援制度も設けられるようになるでしょう。
※2 出典:日本の労働人口の49%が人工知能やロボット等で代替可能に(野村総合研究所)
忙しいなかでも勉強を継続するためには「何のために勉強するのか」という目的を自分の中で明確にすることが重要です。そのためにも、社会人が勉強するメリットについて改めて考えてみましょう。ここでは主な3つをご紹介します。
勉強で身に付けたスキルによって、社内で個人の付加価値を高めることができ、担当できる業務の幅が広がる可能性があります。そうすると、仕事で実績を生むきっかけになり、その実績が評価されれば、昇進や昇給につながったり、希望する部署に異動できたりする可能性もあるでしょう。
なお、企業によっては資格を取得した人に対して資格手当を支給したり、資格を取るためにかかった教材費や受験料を負担してくれたりする場合もあります。
社会人になってから勉強することは、人生の幅を広げるこ社会人になってから勉強することは、人生の幅を広げることに直結します。内容によっては自分の市場価値を高めることができるでしょう。
また、身に付けるスキルによっては、独立したり、副業したり、企業に勤める以外の働き方もできるようになるかもしれません。勉強を始める際は、どんな働き方をしたいかを考えて勉強内容を検討するとよいでしょう。
努力して自らの力で目標を達成した経験や、勉強したことを活かして主体的に働ける状態は自信につながるでしょう。また、資格を取得した場合、自分の身に付けたスキルや知識を証明できるため、自分の価値を周りへアピールすることができます。
社会人は忙しいからこそ、勉強する時間を捻出し、継続するには工夫が必要です。ここでは、忙しい社会人でも勉強を継続しやすい工夫を3つご紹介します。
勉強する時間を取りにくいだけでなく、勉強することが強制ではない社会人にとって、勉強の目的をはっきりさせることは何より重要です。「みんなやっているから」「すすめられたから」など勉強する目的があやふやだと、モチベーションを保ちにくくなってしまいます。上記でご紹介した勉強のメリットを参考に「自分は何のために勉強するのか」をはっきりさせておきましょう。
また、勉強の目標を設定する際には、「状態・結果・行動」の3つに分けて設定するのがおすすめです。
この3つの目標を設定することで、行動が明確になり、モチベーションの向上・維持につながります。
働いていると「予定より残業が長引いた」「大きなトラブルが発生して休日出勤することになった」「急な飲み会が入った」など、イレギュラーなイベントが生じることはよくあります。社会人が勉強の計画を立てる際は、こうした事態にも対応できるようなゆとりを考慮することが大切です。
たとえば、1週間の勉強計画に「予備日」を設けておくのがおすすめです。イレギュラーなイベントによって計画が遅れても、予備日を使って補填することができるからです。また、「急な残業や飲み会で勉強時間が確保できない場合は、その日のうちに計画を調整する」「疲れていてもこれだけはやることを決めておく」など、ルールを決めておくのもよいでしょう。
このようにイレギュラーを想定した計画にすることで「きちんと計画を立てたのに、その通りに進めることができなかった」と自己嫌悪に陥ったり、モチベーションが下がったりすることも防げます。
忙しくてまとまった勉強時間を取ることがなかなか難しい社会人。だからこそ、通勤時間や外出先で電車や友人を待つ時間、就寝前の15分など、隙間時間をいかにうまく活用できるかが大切です。隙間時間をうまく活用するためのコツは、あらかじめルールを決めておくことです。たとえば、通勤時間は下記のようにルールを設けるとよいでしょう。
このようなルールを設けると、どのように勉強するかその場で考えずに済むので、少ない隙間時間でもフル活用することができます。
何を勉強するべきかは、現在の仕事やこれからのキャリアプラン、また興味のある分野などによって、人それぞれ異なります。ただ、「何を勉強すればよいのか悩んでいる」「人気のあるジャンルを知りたい」という方も多いでしょう。そこで、ここではおすすめの勉強ジャンルを4つご紹介します。
近年では自動翻訳ツールのおかげで、誰でも簡単に外国語の文章の翻訳・作成ができるようになりました。それでも、ビジネスレベルの外国語を使える人材のニーズは高く、転職サイトでは高待遇の求人が見つかることも多いでしょう。そのため、外資系企業での働き方やグローバルな仕事に興味がある人だけでなく、年収を上げたい人にも語学の勉強はおすすめです。
一般的なビジネスの語学系テストならTOEICが挙げられます。TOEICのスコアは英語力の評価指標として信頼度が高く、英語力を数値化して示すことができます。語学系の勉強は海外で仕事したい、外国語を使って仕事をしたいと考えている人に向いているでしょう。
エンジニアは現在需要が高い職種の1つです。情報化が進み、AIが発達するなかで、日本ではエンジニアが不足しています。経済産業省・みずほ情報総研株式会社が発表した「IT人材需給に関する調査」によると、2018年時点での需要と供給の差は22万人となっています。※3
こうした状況からエンジニアの求人は増えており、未経験者を対象としたものもあるため、プログラミングを学ぶことでキャリアの選択肢が広がるでしょう。エンジニアのほかに、ITシステムやWEBサービスなどに関わる仕事でも、プログラミングの知識は武器になります。勉強して損はないジャンルといえるでしょう。
※3 出典:IT人材需給に関する調査(経済産業省・みずほ情報総研株式会社)
動画編集は独学でも習得しやすく、昨今需要が高まっていることからおすすめの勉強ジャンルです。株式会社サイバーエージェントと株式会社デジタルインファクトの共同調査によると、動画広告市場は今後も拡大する見込みとなっており、2026年には1兆2,451億円に達する予想がされています。※4 特にCGクリエイターはアニメ、ゲーム、広告、VRなどの業界において活躍でき、将来性が高いといえます。
また、副業でも動画編集の案件は増えているので、スキルを習得して何か副業を始めたいという方にもおすすめです。
※4 出典:サイバーエージェント、2022年国内動画広告の市場調査を実施(株式会社サイバーエージェント・株式会社デジタルインファクト)
お金にまつわる勉強は、経理や税務関係のスキルを身に付けたい方、資格を取ってキャリアアップを目指したい方におすすめです。
また、経理や財務など直接的にお金に関わる職種でなくとも、ビジネスに携わるうえで学んでおいて損はありません。特に、会社での職位が上がり、事業や組織を管轄する立場になると、自分でお金を動かす機会も増えます。
さらに、プライベートでの財産管理や資産運用に役立つこともあるでしょう。お金にまつわる知識は、早いうちから身に付けておくことでさまざまな場面で活きてきます。
日商簿記は経営管理能力を身に付けることができる資格です。簿記検定には初級、3級、2級、1級の4種類があり、一般的には低い級から順に取得していきます。簿記を正しく読み解くことができれば、組織の経営状況や業務の課題をお金の流れから理解することができます。
どのようなビジネスでも、お金の流れは必ず存在します。もちろん、それぞれの立場や職種によってどのような数字を見るかは異なりますが、簿記の知識は共通で使うことができるため、一度身に付けておくと将来まで役立つでしょう。
また、決算書からその企業を分析したり、これから成長する企業を見極めるたりすることができるため、それを踏まえた営業活動や、転職の際の企業選びにも役立ちます。
このように、簿記は経理・財務関係の職種の人だけでなく、あらゆる職種のビジネスパーソンにおすすめの資格です。
税金や年金、保険などお金に関わる専門知識を身に付けているファイナンシャルプランナーは、1級から3級までの3種類のファイナンシャル・プランニング技能検定試験を受けることで資格を得ることができます。仕事以外でも家計の見直しや、資産運用ができるようになるなどといったメリットがあります。
なかなか勉強時間の確保が難しい社会人ですが、スケジュールを立てたり、スキマ時間を利用したりして勉強することで、自身のキャリアアップや転職、独立、副業への可能性が広がります。学びを通して新たな知識やスキルを取り入れることで、自身の成長につなげられるとよいですね。今後かなえたい具体的なイメージがあるのなら、自分に合った勉強法を検討して積極的に取り入れてみるのはいかがでしょうか?
『PERSOL MIRAIZ』は、はたらくすべての人が利用できる無料のリスキリングサービスです。本来は高額なスキルの学習やキャリアカウンセリングを、誰でも気軽に始められます。
さん
一般社団法人ジャパン・リスキリング・イニシアチブ 代表理事 チーフ・リスキリング・オフィサー / SkyHive Technologies 日本代表
早稲田大学政治経済学部卒業後、1995年に富士銀行(現みずほ銀行)入行。2002年、グローバル人材育成を行うスタートアップをNYにて起業。2011年、米国の社会起業家支援NPOアショカの日本法人設立に尽力。2021年、日本初のリスキリングに特化した非営利団体、一般社団法人ジャパン・リスキリング・イニシアチブを設立。日本全国にリスキリングの成果をもたらすべく、政府、自治体向けの政策提言および企業向けのリスキリング導入支援を行う。著書『自分のスキルをアップデートし続ける「リスキリング」』(日本能率協会マネジメントセンター)は「読者が選ぶビジネス書グランプリ2023」イノベーター部門賞を受賞。2023年9月に続編『新しいスキルで自分の未来を創る「リスキリング実践編」』を上梓。
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