2024/03/25
コミュニケーションスキルとは、対人間の意思疎通や情報共有をスムーズに行うための技術や能力のことで、ビジネスシーンにおいて重要なスキルです。この記事では、コミュニケーションスキルの構成要素や高めるために意識するポイントなどをご紹介します。
コミュニケーションスキルはさまざまな定義が可能ですが、ここでは以下を定義とします。
【本記事における定義】
コミュニケーションスキルとは、相手との意思疎通や情報共有をスムーズに行うための技術や能力のこと
同様の言葉として、「コミュニケーション能力」、「コミュニケーション力」といった言葉もよく使われています。ビジネスの場において、コミュニケーションスキルは信頼関係を築いたり、業務を円滑に進めたりするための基本スキルの1つです。
また、コミュニケーションスキルは、時代の変化のなかで重要性を増しています。内閣府の調査によると、デジタル時代に求められるスキルの1つに、コミュニケーション能力が挙げられています。※1 第4次産業革命によって技術が大きく進化するなかで、AIやロボットといった機械が代替することが難しい業務に対応できるスキルの重要性が増しています。そのスキルの1つが、コミュニケーションスキルなのです。
また、こうした技術革新を背景に、リスキリングやリカレント教育の注目度も高まっています。リスキリングやリカレント教育についてより詳しく知りたいという方は、以下の記事をご覧ください。
この記事では、コミュニケーションスキルを高めたいという方に向けて、コミュニケーションスキルとはどういったものなのか、コミュニケーションスキルの高い人の特徴や高めるためのポイントなどについて解説していきます。
※1 出典:「平成30年度 年次経済財政報告」(内閣府)
コミュニケーションは、言語によるコミュニケーション(バーバルコミュニケーション)と非言語によるコミュニケーション(ノンバーバルコミュニケーション)の2つで構成されます。言語によるコミュニケーションは、言葉を使って他者と意思疎通や情報伝達を図ることであり、非言語によるコミュニケーションは、言葉の内容ではなく、仕草や身振り手振り、声色や話す速度などから相手にメッセージを伝えたり、相手のメッセージを読み取ったりすることです。
コミュニケーションスキルを高めるためには、コミュニケーションを「双方向のもの」と捉えることが重要です。コミュニケーションスキルと聞くと、うまく人に話す力や、伝える力をイメージするかもしれませんが、相手の話を上手に聴く力や、メッセージをくみ取る力もコミュニケーションスキルに含まれます。どれだけ話す・伝える能力が高かったとしても、人の話を聴かなかったり、くみ取れなかったりすると、コミュニケーションスキルが高いとはいえません。コミュニケーションは双方向のやりとりであることを忘れないようにしましょう。
コミュニケーションを双方向のものと前提とすると、コミュニケーションスキルは「伝える力」「受け取る力」の2つに大きく分けられます。つまり、コミュニケーションスキルは、下記4つの要素で構成されています。
以下ではそれぞれの力について詳しく見ていきましょう。
言葉で伝える力は、「書く」「話す」などを通して、自分の考えを言葉で他者に伝える能力のことです。「相手に伝わるように伝える能力」ともいえるでしょう。たとえば、伝えたい内容を論理的に説明できたり、複雑な内容を要約して伝えることができたり、相手に合わせて話す内容や使う言葉を変えられたりする能力は、言葉で伝える力の1つでしょう。
非言語で伝える力とは、表情やジェスチャー、声のトーンなどで自分の思いや考えを表現する力です。非言語で伝える力は、コミュニケーションにおいて非常に重要です。アメリカの心理学者、アルバート・メラビアンが提唱した「メラビアンの法則」では、人間は、コミュニケーションにおいて言語情報が7%、聴覚情報が38%、視覚情報が55%の割合で相手に影響を与えるとしています。
このことからも、非言語コミュニケーションの与える影響の大きさが分かるでしょう。具体的には、話し方に抑揚をつけたり、声のトーンを変えたり、表情を変えたりできることが非言語で伝える力にあたります。
相手の言葉を聴く力とは、相手の話に熱心に耳を傾け、メッセージを受け止める力です。相手の話をさえぎったりせず、最後まで聴く力ともいえます。
具体的には、目線や体の向きを相手に合わせたり、相槌を打ったりして、聴いていることを示すといったことが挙げられます。相手の言葉を聴く力があると、相手も話しやすくなり、より円滑なコミュニケーションを取れるようになります。
受け取る力の1つとして、相手の非言語情報を読み取る力も重要です。相手が伝える言葉の内容だけでなく、声のトーンや、姿勢などにも注目することで、相手のメッセージをより深く理解できるでしょう。たとえば、「ここは抑揚をつけて話しているから大事なことなんだろう」、「話すスピードが早いから、緊張しているのかな?」など、話の内容に加えて、相手の仕草をよく観察し、注目することで、相手の心情を理解できます。これはお互いの信頼関係構築にもつながるため、よりスムーズなコミュニケーションが期待できるでしょう。
ここからはコミュニケーションスキルが高い人はどのような特徴を持っているのかご紹介します。コミュニケーションスキルが高い人の特徴として、外交的な性格や社交性が必須であると思われがちですが、一概にそうとはいえません。外交的で他者に積極的に話せる人でも、聴く力がなければコミュニケーションスキルが高いとはいえません。逆に、内向的な人でも、相手の思考を読み取る力が高かったり、言葉数は少なくても論理的に情報を整理するのが上手で、コミュニケーションが円滑に取れたりするというケースもあります。このように、コミュニケーションスキルの高さは、あまり性格や性分に依存しないのです。では、コミュニケーションスキルが高い人とはどのような人でしょうか?
ここからは、「伝えるとき」「受け取るとき」の2つの要素ごとに、コミュニケーションスキルが高い人の具体的な特徴をご紹介します。あくまで一例ですが、自分に当てはまるか考えてみたり、周りのコミュニケーションスキルが高い人を思い浮かべたりして、参考にしてみてください。
ビジネスシーンにおいては、コミュニケーションを取る目的を意識することが大切です。ここからは、ビジネスシーンにおけるコミュニケーションの目的についてご紹介します。
良好な人間関係を築くことは、スムーズに業務を行うために必要不可欠です。そのためには、日頃のコミュニケーションが重要です。コミュニケーションを密に取り、お互いのことを理解することが、良好な人間関係を築くことにつながります。
日ごろからコミュニケーションを密に取っていれば、どういった思考や価値観を持っているのか、何が得意で、何が苦手かなど、その人について理解することができます。良好な人間関係を築けていれば、困ったときに助け合ったり、サポートし合ったりといったことにもつながるでしょう。
ビジネスの場では、情報の共有が必要不可欠です。たとえば、上司から業務内容を聞いたり、クライアントの事業内容を社内に共有したり、スケジュール確認や調整を行ったりなど、多くの場面で情報共有のためのコミュニケーションが必要とされます。
ビジネスシーンにおいては、相手に働きかけるためにコミュニケーションを取ることも多いでしょう。たとえば、営業先の担当者に自社製品をプレゼンしたり、会社の上司に業務の改善案を提案したりなど、相手を説得したり、交渉したりすることが頻繁に行われます。そこで必要になってくるのがコミュニケーションスキルです。相手に分かりやすく伝える力や、相手が質問や話しやすい雰囲気を作ったりする力が重要です。
ここからはコミュニケーションスキルを高めるために意識すべきポイントについて、伝える側と受け取る側に分けてご紹介します。まずは、伝える力についてです。
相手が分かりやすいように、結論ファーストを意識して話しましょう。結論ファーストとは、冒頭に自身の伝えたい内容の結論を話し、そこから理由や具体例などの詳細を伝えていく話し方のことです。結論ファーストで話すことで、受け取る側に何を最も伝えたいのかを提示しやすく、受け取る側も理解がしやすくなります。
上司にミスやトラブルを報告する際は、言い訳や余計な情報を伝えてしまいがちです。しかし、そのような時こそ、何が起きたのか、どのような対処をしたのか、明確な事実や結論から話す意識を持って伝えましょう。
結論ファーストで話すのに加えて、PREP法で話すことも意識するとよいでしょう。PREPとは、「結論(P)」「理由(R)」「具体例(E)」「結論(P)」の略で、この順で話すことを指します。PREP法に沿うことで論理的で分かりやすい説明ができます。
結論から話すことのメリットは先ほどご説明した通り、聞き手が話の論旨を理解しやすいことです。次にその結論に至った理由を説明することで、先に述べた結論の説得力が増します。さらにその後、具体例を交えることで聞き手から共感を得られやすく、結論をスムーズに伝えられます。
前述のメラビアンの法則でお伝えした通り、非言語コミュニケーションはとても大切です。そのため、話す内容に加えて、相槌や表情、身振り手振りといった非言語コミュニケーションを意識して話すようにしましょう。たとえば、抑揚をつけて話せば受け手は重要なポイントが分かりますよね。
プレゼンや発表をする際にも、資料やパソコンの画面を見たまま話をしてしまうと、受け手は表情を読み取ることができません。また、最悪の場合、伝える気がないのではないかと誤解されてしまう恐れもあります。そのため、伝える際は言葉でどう伝えるかだけでなく、非言語コミュニケーションも意識するようにしましょう。
続いて受け取る力で意識しておくべきポイントをご紹介します。
話を聞く際は適度に相槌を打つようにしましょう。相槌は、「自分は話を熱心に聴いている」、「理解している」、「共感している」と示す合図だからです。話を聞くときに何も反応をしないと、相手が話しにくい雰囲気になってしまったり、「この人は本当に理解しているのかな?」と不安に思わせてしまったりする恐れもあります。相槌は意識すればすぐに実践できるため、コミュニケーションスキルを鍛えたい方は、まずは相槌を意識することから始めるとよいでしょう。
コミュニケーションスキルの高い人は質問力も高いのが特徴です。質問することで、話し手は「自分自身に関心や興味を持って話を聴いてくれていたんだ」という安心感を得られます。また、受け手側にとっても相手からより多くの情報が聞けたり、情報を整理できたりするため、よい影響をもたらします。
話の聞き方にはいくつかのテクニックがあります。この記事では、テクニックを3つご紹介します。意識すればすぐに実践できる内容もあるので、参考にしてみてください。
ミラーリングを意識する
相手の使う言葉や仕草を真似ることで、自分に対しての親近感や信頼感が増すという心理現象のことです。会話のスピードやトーンをそろえたり、相手の姿勢や表情に合わせたりすることで、相手はコミュニケーションを取りやすいと感じてくれるでしょう。
バックトラッキングを意識する
バックトラッキングとは、コミュニケーションのなかで相手の使った言葉を「オウム返し」することです。たとえば、「昨日は焼肉に行ったんだ」と言われたら「へぇ、焼肉に行ったんだー!いいなー!」と返答することです。こうすることで、相手は自然と肯定されていると感じられます。
コミュニケーションを円滑に取るには、相手のことを否定しないことが大切なので、バックトラッキングを意識すると、相手を無意識のうちに否定したり、抵抗感を与えたりすることを防げるでしょう。
パラフレーズを意識する
パラフレーズとは、相手の話を整理して、言い換えてみることです。たとえば、「人手不足で困っている」という話を「人手がまかなえれば解決するということですね」と言い換えるといった具合です。相手の話を自分の言葉で言い換えてみることで、お互いの認識のずれがないか確認したり、話を理解していることを相手に示したりすることができます。
ここまでコミュニケーションスキルについて解説してきました。コミュニケーションは双方向のやりとりであり、コミュニケーションスキルを高めるには伝える力、受け取る力その両方を高めることが必要です。
コミュニケーションスキルを高めることで、良好な人間関係を築けたり、業務を円滑に進めたりすることができます。良好な人間関係を築ければ、人との関わり合いが楽しくなり、仕事に前向きに取り組めることも期待できます。コミュニケーションスキルを高めることは、日々の仕事の充実につながりうるのです。上記でご紹介した鍛え方を参考に、コミュニケーションスキルを磨いて楽しく働きましょう!
『PERSOL MIRAIZ』は、はたらくすべての人が利用できる無料のリスキリングサービスです。本来は高額なスキルの学習やキャリアカウンセリングを、誰でも気軽に始められます。
さん
一般社団法人ジャパン・リスキリング・イニシアチブ 代表理事 チーフ・リスキリング・オフィサー / SkyHive Technologies 日本代表
早稲田大学政治経済学部卒業後、1995年に富士銀行(現みずほ銀行)入行。2002年、グローバル人材育成を行うスタートアップをNYにて起業。2011年、米国の社会起業家支援NPOアショカの日本法人設立に尽力。2021年、日本初のリスキリングに特化した非営利団体、一般社団法人ジャパン・リスキリング・イニシアチブを設立。日本全国にリスキリングの成果をもたらすべく、政府、自治体向けの政策提言および企業向けのリスキリング導入支援を行う。著書『自分のスキルをアップデートし続ける「リスキリング」』(日本能率協会マネジメントセンター)は「読者が選ぶビジネス書グランプリ2023」イノベーター部門賞を受賞。2023年9月に続編『新しいスキルで自分の未来を創る「リスキリング実践編」』を上梓。
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