2024/02/28
社会人の学び直しは、新たなスキルや知識を身に付けることで、キャリアアップにつながったり、働き方の幅が広がったりする重要な取り組みです。この記事では学び直しの重要性や方法について解説します。
近年、働き方やライフスタイルの多様化が進むなかで、理想のキャリアや豊かな生き方を実現しようと、「学び直し」に興味を持つ社会人が増えています。しかし、新たに何かを学び始めようと考えていても「どこで何を学べばいいのだろう」「仕事との両立はできるだろうか」など、行動に移すことにハードルを感じている方も多いのではないでしょうか?
本記事では、社会人の学び直しについて、その重要性や方法について紹介します。まずは、学び直しと関連性の高い「リスキリング」「生涯学習」「リカレント教育」についてそれぞれ説明します。
リスキリングとは、新しい業務や職業に就くことを目的に、今の仕事とは異なる領域や職種のスキルを身に付け直すことです。たとえば、営業職の人がマーケティング職で必要とされるデータ分析の勉強をしたり、デザイナーに必要とされるUI・UXの勉強をしたりするのはリスキリングといえるでしょう。
リスキリングの具体的な方法は、セミナーに参加したり、オンラインプログラムを受けたり、資格を取得したりするなどさまざまで、「こうしないといけない」といった決まりはありません。
また、リスキリングの必要性はますます増しており、その背景には、デジタル技術の急速な発展があります。というのも、今ある仕事がAIやロボットに代替されたり、新しい仕事が生まれたりすると予測されるなかで、個人のスキルをアップデートする必要があるからです。
リスキリングは、「新しいビジネスやプロジェクトを立ち上げたい」「今とは違う職種、業界で働きたい」「デジタル人材になって活躍したい」という方に向いています。
また、リスキリングに取り組みたいけれど、何から始めればよいかわからないという方には、『PERSOL MIRAIZ』の学習コースがおすすめです。キャリアの選択肢を広げるオリジナルコースを無料でご提供しています。※ご利用には無料登録が必要です。
生涯学習とは、生涯にわたって行うあらゆる学習活動です。リスキリングが仕事に関する学習であるのに対し、生涯学習は仕事に限らないあらゆる学習を含みます。たとえば、学校教育、家庭教育、社会教育、文化活動、スポーツ活動、レクリエーション活動、ボランティア活動、企業内教育、趣味の場で行う学習なども生涯学習の一例といえるでしょう。
社会人が学習する意義は、必ずしも仕事のための自己成長だけではありません。学習によって知識を深めたり、よりよい人間関係や社会とのかかわりを築いたりすることは、人生の豊かさにつながるでしょう。
リカレント教育は、生涯学習の手法の1つで、「働く→学ぶ→働く」という就労と学びを交互に繰り返す学習の在り方のことです。総務省によると、「リカレント教育は、就職してからも、生涯にわたって教育とほかの諸活動(労働、余暇など)を交互に行うといった概念」とされています。※1
リカレント教育の具体的な取り組みの方法はさまざまです。就職後、大学院や専門職大学院、専門学校に進学したり、民間の資格取得を目指したりといった例が分かりやすいでしょう。
リスキリングはこれからの未来を見据えて必要なスキルを身に付けることに重きが置かれる一方、リカレント教育は個人の関心に基づいて何を学ぶか選択します。このように、何を学ぶかという点がリスキリングとの違いの1つです。
※1 出典:「情報通信白書(平成30年度版)」(総務省)
社会人の学び直しが重要性を増す理由は、平均寿命の延びと、テクノロジーの発展という2つの社会変化が背景にあります。それぞれについて解説していきましょう。
人生100年時代と題されるほどに、平均寿命は年々延びています。内閣府の調査によると、2060 年には男性が84.19歳、女性が90.93歳となることが見込まれています。それに加え、日本は少子高齢化による労働人口の減少を解消するべく、定年が延長されています。
そのような社会では、「学ぶ」「働く」「引退する」という従来の単純な3つのステージから、「マルチステージ」というモデルにシフトしていく必要があります。マルチステージとは、会社勤め、フリーランス、学び直し、副業・兼業、起業、子育て、ボランティアなど、さまざまなステージを並行・移行しながらキャリアアップ、キャリアチェンジしていくスタイルです。
だからこそ、多様なライフスタイルやライフステージの変化に応じた生き方・働き方ができるよう、何歳になっても学び直しを繰り返して自らをアップデートする必要があるのです。
現代は、第4次産業革命の真っ只中です。第4次産業革命とは、IoTやAI、ビッグデータの活用によりもたらされる技術革新のことを指し、この技術革新によって仕事は大きく変わっていきます。
2015年に発表された野村総合研究所とオックスフォード大学の共同研究によると、日本の労働人口の 49%が就いている職業が、人工知能やロボットなどで代替可能になると試算されています。また、2020年10月に発表されたThe Future of Jobs Report 2020では、「今後5年間で、人間、機会、アルゴリズムの労働分担が進むことによって、8,500万件の雇用が消失し、9,700万件の新たな雇用が創出される」と予測されました。※2
つまり、仕事で求められるスキルはテクノロジーの発展によって大きく変わっていくのです。だからこそ、社会の変化に応じて新しいスキルを獲得したりスキルアップしたりといった学び直しの必要性が高まっています。
※2 出典:「The Future of Jobs Report 2020」(World Economic Forum)
学び直しの方法やレベル感はさまざまです。下記の表は、学びの期間やかける費用によって分類した図になります。学び直しは、自分に合った学びの方法、スタイルを見つけることが大切です。
科目等履修生制度とは、大学・大学院等の正規課程の科目を、正規入学せずに科目単位で履修できる制度です。また、履修証明プログラムとは、大学・大学院等が設ける社会人向けの学習プログラムで、修了すると履修証明書が交付されます。
内閣府による「平成30年度生涯学習に関する世論調査」では、学び直しのために必要な取り組みの第1位が「学費の負担などに対する経済的支援」(42.5%)と、経済的負担が学び直しを阻んでいる要因として大きいことが分かりました。※3
そこで、学び直しの負担を軽減しようと政府が支援制度を設けています。今回は3つの支援制度をご紹介します。
※3 出典:「平成30年 度生涯学習に関する世論調査」(内閣府)
教育訓練給付制度は新しいスキルや知識を学び、自身のキャリアを構築することを目的としており、厚生労働大臣が指定した教育訓練を修了した場合に、受講費用の一部が支給される制度です。
対象の教育訓練は約14,000講座あり、受講料の約20~70%を国が補助金として支援します。教育訓練給付制度を利用するための要件は以下の通りです。
教育訓練は、「専門実践教育訓練」「特定一般教育訓練」「一般教育訓練」の3種類に分かれており、それぞれ支給率が変わります。詳しくは以下の通りです。
教育訓練 | 対象講座の例 | 支給率 |
専門実践教育訓練 | ・業務独占資格などの取得を目標とする講座 ・デジタル関係の講座 ・大学院・大学などの過程 ・専門学校の課程 | 受講費用の最大70% (年間上限56万円・最長4年) |
特定一般教育訓練 | ・業務独占資格などの取得を目標とする講座 ・デジタル関係の講座 | 受講費用の40% (上限20万円) |
一般教育訓練 | ・資格の取得を目標とする講座 ・大学院などの課程 | 受講費用の20% (上限10万円) |
公的職業訓練とは、就職支援や給付制度を受けながら、希望の職種に就くためのスキルや資格の取得を目指すことができる制度です。求職中の方であれば、無料で職業訓練を受けることができます。自費で講座を受けたり、スクールに通ったりするよりも費用を抑えられるため、学び直しの経済的負担が気になるという方におすすめです。
就職・転職支援のための大学リカレント教育推進事業は、全国の大学と企業や経済団体、ハローワークなどが連携し、2~6か月程度の間で就職や転職につながるためのプログラムを受講費無料で提供している制度です。
新型コロナウイルス感染症の流行による雇用構造の変化によって、新しいキャリアを築くためのスキルの取得が重視されるようになり、この制度が実施されました。失業者を主な対象としており、非正規雇用労働者や希望の職業に就けていない若者、転職希望の方なども受講可能です。
受講できるプログラムは、情報技術や介護・看護、経営、会計などさまざまです。短期間でプログラムを受講できるため、就職や転職につながる学び直しを考えている方には最適な制度といえるでしょう。
学び直しに積極的に取り組むことで、キャリアアップやキャリアチェンジにつながり、人生の選択肢を広げることができるでしょう。時間的制約や経済的負担が気になるという方は、この記事でご紹介した政府による支援制度を利用するのもおすすめです。
時代の変化に応じた生活を送るためには、自分に合った学び方を取り入れて、アップデートさせることが大切です。学び直しにハードルを感じている方も、この記事をきっかけに新しい一歩を踏み出してみてはいかがでしょうか?
『PERSOL MIRAIZ』は、はたらくすべての人が利用できる無料のリスキリングサービスです。本来は高額なスキルの学習やキャリアカウンセリングを、誰でも気軽に始められます。
さん
一般社団法人ジャパン・リスキリング・イニシアチブ 代表理事 チーフ・リスキリング・オフィサー / SkyHive Technologies 日本代表
早稲田大学政治経済学部卒業後、1995年に富士銀行(現みずほ銀行)入行。2002年、グローバル人材育成を行うスタートアップをNYにて起業。2011年、米国の社会起業家支援NPOアショカの日本法人設立に尽力。2021年、日本初のリスキリングに特化した非営利団体、一般社団法人ジャパン・リスキリング・イニシアチブを設立。日本全国にリスキリングの成果をもたらすべく、政府、自治体向けの政策提言および企業向けのリスキリング導入支援を行う。著書『自分のスキルをアップデートし続ける「リスキリング」』(日本能率協会マネジメントセンター)は「読者が選ぶビジネス書グランプリ2023」イノベーター部門賞を受賞。2023年9月に続編『新しいスキルで自分の未来を創る「リスキリング実践編」』を上梓。
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