2024/02/28
ビジネススキルとは、仕事を行ううえで必要となる知識や能力、技術のことです。カッツ・モデルによると、ビジネススキルは3つに分類され、役職やキャリアによって習得すべきスキルが異なるとされています。この記事では、役職やキャリアごとに習得すべきスキルについてご紹介します。
ビジネススキルとは、仕事を行ううえで必要な知識や能力、技術の総称です。ビジネススキルにはいくつもの種類があり、業務内容や職種、役職などによって求められるスキルは変わります。
また、ビジネススキルは社会人に必要とされる基礎的なスキルから、経営者・マネージャーに求められるスキルまで、レベルの幅が広いのも特徴です。これらを身に付けることは業務の向上だけでなく、ビジネスパーソンとしての可能性を広げることにもつながります。
ビジネススキルを意識的に磨き続けることは、ビジネスパーソンとしての競争力を高めるために非常に重要です。ビジネススキルを習得することで、日々の業務効率や問題解決能力の向上だけでなく、周囲との信頼関係の構築やキャリアアップ、キャリアチェンジなど、長期的な視点での成功にもつながります。
さらに、個人がビジネススキルを習得することは、企業全体にもポジティブな影響をもたらします。従業員1人ひとりのビジネススキルが向上することで、業務効率が上がり、企業全体の生産性が向上するからです。結果、市場における競争優位性の確立につながることもあるでしょう。そういった理由から、従業員のビジネススキルを向上させるために、リスキリングに取り組む企業も増えています。リスキリングを企業が推進することは、「スキルを習得できる職場」や「成長を促進する環境」として評価され、離職率の減少や求職者へのアピールにもなるでしょう。
カッツ・モデルとは、役職ごとに必要な能力を分類して明示したモデルのことです。1950年代にアメリカの経営学者、ロバート・L・カッツ氏によって提唱されました。カッツ・モデルでは、ビジネスに必要なスキルは、「テクニカルスキル」「ヒューマンスキル」「コンセプチュアルスキル」の3つに分けられています。それぞれの特徴は、以下の一覧表の通りです。
ビジネススキルの種類
ビジネススキルの種類 | 特徴 |
テクニカルスキル | 特定の職務や業務に必要な専門的な知識や技術 |
ヒューマンスキル | 他人と効果的にコミュニケーションを取り、協力できる能力 |
コンセプチュアルスキル | 全体的な視点から問題を理解し、戦略的に考える能力 |
ここからは、3つに分類されたスキルの内容について詳しく解説します。
テクニカルスキルとは、業務遂行能力を指し、任された業務を全うするために必要な知識や技術のことを指します。業務や職種によって求められる内容は異なりますが、具体的には以下の一覧表のようなスキルが挙げられます。
テクニカルスキルの例 | 内容 |
情報収集スキル | Webサイトや書籍、新聞などを活用したり、他者にインタビューや質問をしたりして、業務で必要となる情報収集を的確に行える能力 |
分析スキル | 収集した情報を分類し、論理的に説明できる能力 |
資料作成スキル | 業務で必要となる資料を目的に合わせて分かりやすく適切に作成できる能力 |
パソコンスキル | タイピングや書類作成、エラー対応などパソコンを操作できる能力 |
スケジュール管理スキル | 時間を効率よく管理し、業務を計画的かつ円滑に進める能力 |
プログラミングスキル | プログラミング言語を使い、コンピューターに指示を出すことで、ソフトウェアやアプリケーションなどを開発する能力 |
テクニカルスキルは、さらに次の3つに分類できます。
テクニカルスキルの種類 | 特徴 |
汎用スキル | 業種や職種にかかわらず活用できる一般的なスキル |
専門スキル | 業種や職種によって求められる専門的なスキル |
特化スキル | 専門スキルよりさらに高い知識や技術を必要とするスキル |
社会人が必ず習得しておくべき基本的なスキルです。業種や業態に関係なく、あらゆる職務において活用可能です。具体例としては、情報収集能力や資料作成能力などが挙げられます。
特定の職種や職位において必要とされる専門的な技術を指します。その分野での業務を効率的に遂行し、成果を出すために不可欠で、研修や実務経験、自己学習を通じて習得されます。たとえば、IT業界においてはプログラミング能力やシステム設計のスキルが、営業職においては自社製品に関する知識や提案力、商談を成功させる能力などが専門スキルに該当します。
専門スキルを大幅に上回る高度な技術や能力を指します。専門スキルをさらに超えた高度な知識や技術であり、特定の狭い分野に特化しています。希少性が高く、その分野におけるエキスパートや専門家としての地位を築くために重要です。通常、長年の経験や集中的な学習、高度な訓練を通じて習得されます。たとえば、医師や弁護士など、取得者が限られている国家資格を有する専門家の知識や技術は特化スキルの一例です。
ヒューマンスキルとは上司や部下、取引先などの関係者とよりよい関係を築き、ビジネスを円滑に進めるための能力を指します。ヒューマンスキルの例は以下の通りです。
ヒューマンスキルの例 | 内容 |
コミュニケーションスキル | 自分の考えを伝えたり、相手の考えを聞いたりすることで関係性を深める能力 |
プレゼンテーションスキル | 会議や打ち合わせの場で、分かりやすく相手に伝える能力 |
交渉スキル | 条件や意見の異なる点を調整し、お互いが納得できるようにまとめる能力 |
マネジメントスキル | 成果の最大化に向け、経営資源や業務の進捗を管理する能力 |
ヒアリングスキル | 会議や打ち合わせの場で、相手の潜在的な課題を引き出す能力 |
リーダーシップスキル | チームメンバーをまとめて目標達成に向けて導く能力 |
コンセプチュアルスキルとは、情報や状況を客観的に分析することで、起きている出来事の本質を理解し解決へ導く能力のことです。主なスキルは以下の通りです。
コンセプチュアルスキルの例 | 内容 |
ロジカルシンキング(論理的思考) | 物事の原因と結果や根拠と主張を、矛盾や飛躍なく整理する能力 |
クリティカルシンキング(批判的思考) | 周囲の意見や感情に左右されず、起きている物事を客観的に分析し、課題を解決する能力 |
ラテラルシンキング(水平思考) | 固定観念にとらわれずに物事を多角的に捉え、自由な発想をする能力 |
問題解決スキル | トラブルや問題に対して的確な対処を行い、解決する能力 |
俯瞰スキル | 物事の全体像を広い視野で捉えて本質を見極める能力 |
カッツ・モデルでは、企業組織における役職を「ロワーマネジメント」「ミドルマネジメント」「トップマネジメント」の3つの階層に分けて考えます。階層の分類は以下の通りです。
ロワーマネジメント | ミドルマネジメント | トップマネジメント |
・主任 ・係長 ・プロジェクトリーダー ・一般社員 など | ・部長 ・課長 ・支店長 など | ・会長 ・社長 ・副社長 など |
これらの階層により必要とされるスキルの比率はそれぞれ異なります。ここからは先ほどご紹介したスキルとの関係を見てみましょう。
「どんなビジネススキルを身に付けるべきか」と迷ったときには、現在の自分の立場を考えて習得するスキルを見極めることが大切です。ただ、ご紹介した3つのマネジメント区分は全ての組織に当てはまるわけではないことも覚えておきましょう。スタートアップ企業や中小企業では、マネジメントが3階層なかったり、現場に大きな権限が与えられていたりすることもあります。あくまで自分の組織で自分がどういった立場にいるのかを基準に判断しましょう。
また、まだマネジメントについていない若手社員は、まずビジネスマナーから身に付けるのもよいでしょう。ビジネスマナーは、社会人として必要最低限のビジネススキルです。新卒で入社した際に、ビジネスマナーを教わったという方は多いと思いますが、「教えてもらったけど、自信がない…」「忘れてしまった…」という方は、学び直したり、復習したりするのがおすすめです。
ロワーマネジメントとは、主に係長や主任を指します。ただし、一般社員であってもプロジェクトリーダーやチームリーダーなど、複数の社員をまとめる立場はロワーマネジメントに該当します。ロワーマネジメントの役割は、ミドルマネジメントからの指示をもとに現場のメンバーや業務を管理することです。3つの階層のうち、最も現場に近い立場であるため、業務を円滑に遂行するためのテクニカルスキルが多くの場面で求められます。また、チームで結果を出すためにはメンバーとのコミュニケーションに対する配慮もかかせません。そのため、ヒューマンスキルも求められる比率として高いとされています。
ミドルマネジメントとは、部長・課長などの中間管理職を指します。トップマネジメントが定めた戦略や方針、意思決定を、ロワーマネジメントへ伝えて業務の遂行や目標達成を促す役割です。上層部と現場の橋渡しをする立場なので、テクニカルスキルだけでなく、ヒューマンスキルやコンセプチュアルスキルもバランスよく求められます。
ただし、人手不足や働き方改革の影響で、このミドルマネジメントがプレイングマネージャー化している(ロワーマネジメントの延長になっている)会社もあります。組織によってミドルマネジメントの実態は異なる点は留意しておきましょう。
トップマネジメントとは、会長・社長・副社長・役員などの経営層を指します。組織の方向性を決めるトップマネジメント層には的確な経営判断が求められるため、コンセプチュアルスキルが大きな割合を占めます。また、組織の業績を伸ばすためにはメンバーのやる気を引き出すことも大切なので、メンバーの意思や求めるものをヒアリングし、組織構成に活かすヒューマンスキルも求められます。
仕事に必要なビジネススキルは、キャリアによっても異なります。ここでは、新入社員・若手社員、中堅社員、ベテラン社員の3つに分けて解説します。
新入社員にとっては、社会人としての基本であるビジネスマナーやコミュニケーションスキルを身に付けることが極めて重要です。特に、コミュニケーションスキルは業務上の連絡や質問を行う際にかかせません。ほかにも、時間管理スキルやスケジュール管理スキルなどの基礎的な部分を習得し、ビジネスパーソンとしての土台をつくりましょう。
また、若手社員には、情報を効率的に収集する能力をはじめ、その情報や自分の意見を相手に的確に伝える伝達能力・プレゼンテーション能力も必要です。若手から中堅にステップアップするために、周囲の人から評価されるようなスキルを身に付け、キャリアアップを成功させましょう。
中堅社員は、しばしばチームリーダーとしての役割を果たすことが求められます。そのため、メンバーを統率するためのマネジメントスキルや、多様な意見を集約し、より高品質な企画を提案する能力が必要とされます。ほかにも、コーチングスキルやプロジェクト管理スキルなど、部下を育成しながら複数のタスクを効果的に管理し、期限通りに成果を出す能力も重要です。
ベテラン社員は、責任が重く、難易度が高い業務が求められます。戦略的思考力やリスク管理力、交渉・調整力など、高度なビジネススキルを習得しましょう。
ここからは社会人基礎力からビジネススキルを見ていきましょう。
社会人基礎力とは、「職場や地域社会で多様な人々と仕事をしていくために必要な基礎的な力」として、経済産業省が2006年に提唱した考え方です。※1
社会人基礎力は、3つの能力と12の能力要素によって構成されています。詳しくは以下の表をご覧ください。
3つの能力 | 12の能力要素 |
考え抜く力(シンキング) | 課題発見力 計画力 創造力 |
チームで働く力(チームワーク) | 発信力 傾聴力 柔軟性 情況把握力 規律性 ストレスコントロール力 |
前に踏み出す力(アクション) | 主体性 働きかけ力 実行力 |
機械にたとえると、社会人基礎力はOS、業界や職種ごとに必要な能力はアプリにあたります。最新のアプリは、それに対応できるOSがあってはじめて機能するように、能力(アプリ)を活かすためには、基盤となる社会人基礎力(OS)が重要です。
※1出典:社会人基礎力,経済産業省
(最終確認:2024年12月3日)
「人生100年時代」や「第4次産業革命」といった社会変化に伴い、社会人基礎力の重要性はより高まっています。そこで、経済産業省は2006年に提唱した社会人基礎力を「新・社会人基礎力」としてアップデートしました。
人生100年時代の社会人基礎力とは「これまで以上に長くなる個人の企業・組織・社会との関わりのなかで、ライフステージの各段階で活躍し続けるために求められる力」と定義されています。※2
人生100年時代の社会人基礎力では、能力を発揮するにあたって、「何を学ぶか(目的)」、「どのように学ぶか(学び)」、「どう活躍するか(組合せ)」のバランスを図ることが、自らキャリアを切り開いていくうえで必要と位置付けられました。
※2出典:人生100年時代の社会人基礎力,経済産業省
(最終確認:2024年12月3日)
ここからは、自分がどのビジネススキルを学べばよいのか分からない方に向けて、身に付けるべきビジネススキルを知る方法をご紹介します。
日常的に業務で関わる上司や先輩、同僚からのフィードバックは、自己理解を深めるために有益です。フィードバックをもらうことで、自分自身では気付きにくい改善点を客観的に認識できるでしょう。特に、自分より経験豊富な人にフィードバックをもらうことで、自分の課題や強みが見つかり、どのスキルを強化するべきかが分かってくるでしょう。
キャリアパスや目標を明確にすることを通して、身に付けるべきスキルが分かってきます。5年後、10年後にどのようなポジションにいたいか、どんな役割を担いたいかを考えると、それに向けて必要なスキルが見えてくるでしょう。また、過去の経験や業務内容を振り返り、自分が持っているスキルを洗い出すのも効果的です。すでに持っているスキルが分かれば、そのスキルをさらに伸ばすべきか、ほかのスキルを新たに身に付けるべきか判断しやすいでしょう。
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ここからは、ビジネススキルを学ぶ方法をご紹介します。
現場での実務経験に優れた上司や先輩から直接学ぶ方法です。座学だけでは得られない実践的なスキルを習得することができます。普段から上司や先輩がどのように仕事をしているかを観察したり、分からないことを質問したりして学びましょう。
研修やセミナーで学ぶ方法もあります。社内外問わず、自分が習得したいスキルの情報を集め、積極的に参加しましょう。ただし、なかには費用がかかるものもあるので注意が必要です。
身に付けたい資格やスキルに関する書籍で学ぶ方法です。自分のペースで学びたい方や、専門的な分野の資格や知識が学びたい方におすすめです。
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ビジネススキルを磨く、身に付けることに対して、さまざまな環境が今後整っていくことが予想されるため、何を学ぶか(目的)、どのように学ぶか(学び)、どう活躍するか(組合せ)のバランスを考え、できることから取り組んでみてくださいね。
さん
一般社団法人ジャパン・リスキリング・イニシアチブ 代表理事 チーフ・リスキリング・オフィサー / SkyHive Technologies 日本代表
早稲田大学政治経済学部卒業後、1995年に富士銀行(現みずほ銀行)入行。2002年、グローバル人材育成を行うスタートアップをNYにて起業。2011年、米国の社会起業家支援NPOアショカの日本法人設立に尽力。2021年、日本初のリスキリングに特化した非営利団体、一般社団法人ジャパン・リスキリング・イニシアチブを設立。日本全国にリスキリングの成果をもたらすべく、政府、自治体向けの政策提言および企業向けのリスキリング導入支援を行う。著書『自分のスキルをアップデートし続ける「リスキリング」』(日本能率協会マネジメントセンター)は「読者が選ぶビジネス書グランプリ2023」イノベーター部門賞を受賞。2023年9月に続編『新しいスキルで自分の未来を創る「リスキリング実践編」』を上梓。
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