2024/04/18
マネジメントスキルとはヒト・モノ・カネといった経営資源、チームの連携や事業の功績などビジネスに関する全般を管理する能力のことです。この記事では、管理職やマネージャーといった役職を目指している方に向けて、スキルの具体例や身に付け方を解説します。
マネジメントスキルとは、ずばり「管理スキル」を指す用語です。マネジメントスキルにおける管理の対象には、ヒト・モノ・カネ・時間・情報などの経営資源に加え、チームの連携や事業の功績など、ビジネスに関連する諸要素全般が含まれます。よって、ビジネスの場でマネジメントスキルが必要とされる業務は、プロジェクトの目標設定やチームのモチベーション管理、仕事の進捗管理、部下の育成・評価など多岐に渡ります。
マネジメントという概念を体系的に整理したのは、経営や経済に関する著書を数多く発表し、現代においても「経営学の神様」と称されるアメリカの経営学者ピーター・F・ドラッカーです。彼は自身の著書において、「マネジメントとは組織に成果を上げさせるための道具・機能・機関である」と定義しました。すなわち、マネジメントは、対象をうまく管理し、組織における利益を最大化させることがポイントといえるでしょう。
マネジメントをする人のことをマネージャー、もしくは管理職と呼びます。昇給や昇格を目指してこれらのポジションを志望されている方もいると思いますが、そのためにはマネジメントスキルを習得していくことが必要です。この記事では、マネジメントスキルの具体例やその身に付け方、役職ごとに求められるスキルの違いについても解説しますので、ぜひ参考にしてみてください。
また、マネジメントスキルに限らず、新しい知識やスキルの獲得に興味がある方には、リスキリングやリカレント教育についても理解しておくのがおすすめです。下記で詳しく紹介しているので、ぜひ参考にしてみてください。
マネージャーや管理職といった組織を牽引するポジションに求められる能力には、マネジメントスキルのほかに、リーダーシップがあります。マネジメントスキルとリーダーシップの定義にはさまざまなものがありますが、ここでは管理の対象に着目して違いを整理します。
リーダーシップは主に組織の「ヒト」を導く能力なのに対し、マネジメントスキルはヒト以外にも、モノやカネ、情報といったそのほかの経営資源や、作業進捗などビジネスに関わる全般の管理を行う能力です。よって、マネジメントスキルとして求められる能力の一部にリーダーシップが含まれるといった関係性ともいえるでしょう。
ビジネスにおいて求められるスキルは、大きくハードスキルとソフトスキルの2種類に分けることができます。ハードスキルは、特定の学習を行ったり経験を積んだりすることによって比較的身に付けやすい能力です。ハードスキルは、資格取得や実務を通じて習得度合を客観的に評価しやすい点が特徴です。具体的には、語学力やプログラミング能力、統計分析などの能力が挙げられます。管理職には、率先してこれらのハードスキルを習得し、部下をはじめとした他者にも同様のスキル習得を奨励・指導することが求められます。
一方で、ソフトスキルはコミュニケーション能力や自発性、リーダーシップといった、仕事に従事するうえでベースとなる個人の特性に近い能力を指します。そのため、普段の生活において無意識のうちに習得することも多く、教材や第三者からの指導を通じて意図的に習得できるとは限りません。よって、ソフトスキルはハードスキルと比べると、日頃の積み重ねが習得度合により大きな影響を与えるスキルといえるでしょう。また、特定の指標に基づいて習得度合を測りにくいため、数値やデータから定量的な評価に表れにくいスキルもあります。
ソフトスキルは、プロジェクトの進行を指揮したり、意思決定を下したりする場面において、より求められるスキルです。そのため、組織運営に必要な管理全般を行うマネジメントスキルを鍛えるには、ソフトスキルの習得がかなり重要です。
ここからは、マネジメントスキルの7つの例をご紹介します。
<マネジメントスキルの具体例>
コーチングスキルとは、コミュニケーションスキルの一種で、相手の潜在的な能力や可能性を最大限に引き出すスキルです。管理職にとって、コーチングスキルは人材育成を行う場面で必要になり、部下の主体性を促す効果があります。ビジネスにおいては部下の成長も管理の対象であるため、マネジメントスキルを磨くためにも、コーチングスキルの習得は重要です。コーチングスキルを身に付けるためには、相手の些細な成長にも気付いて褒めることのできる承認力や、相手の発言を最後までよく聴く傾聴力、相手の成長につながる質問を投げかける質問力などを鍛えることが必要となります。
マネジメントスキルは組織を管理する能力であるため、集団をまとめるリーダーシップが必要不可欠です。優れたリーダーシップを発揮するためには、物事を俯瞰的に見る力や、迅速に適切な判断を下す意思決定力、周囲の人々を動かす伝達力を磨くことが重要です。リーダーシップは、チームを導くために主体的に行動すれば、どの立場であっても発揮できるため、若手のうちから鍛えることのできるでしょう。
アセスメントスキルとは、メンバーそれぞれの能力や性格を的確に把握し、育成すべきポイントを見極める能力のことです。メンバーにとって適した業務を割り振り、作業効率を向上させることで、結果として組織全体のパフォーマンスを最大化できます。アセスメントスキルを身に付けるためには、日頃から周囲のメンバーの行動を観察することが大切です。また、面談をはじめとしたメンバーとの対話の機会を設けることもよいでしょう。
目標・ビジョン設定スキルとは、内部環境・外部環境を踏まえて、進むべき方向性を示したり、適切な目標を設定したりする能力です。マネジメントレベルによって、検討すべき目標・ビジョンの粒度は異なります。トップマネジメントは、社会の大きな潮流と自社の経営状況を踏まえ、組織単位のビジョンや目標を設定する力が求められます。ミドルマネジメントやロワーマネジメントは、部署やプロジェクト、チーム単位での目標を適切に設定する力が求められます。
テクノロジーの進化によって、日々目まぐるしい変化を遂げる昨今のビジネス現場では、情勢変化の波に素早く対応するべく、特にこの目標・ビジョン設定スキルの必要性が高まってきています。この能力を身に付けるためには、社会の変化を機敏に察知できるように、日頃からさまざまな情報に対してアンテナを張る癖を付けておくとよいでしょう。
ファシリテーションスキルとは、会議をはじめとした話し合いの場で、議論を円滑に進行するスキルのことです。いわば会議の進行を管理する能力であるため、マネジメントスキルを鍛えるためには欠かせない能力といえます。このスキルを身に付けるためには、意見を引き出すための対人関係能力、議論の内容を整理する構造化能力、合意形成能力を磨くことが重要です。また、資料作成をはじめとした事前準備を行い、会議を円滑に進行しやすい場を提供する力もファシリテーションスキルの一種といえるでしょう。
プロジェクトマネジメントスキルとは、プロジェクトを円滑に進めるために、スケジュールや予算をはじめとしたさまざまな要素を管理する能力のことを指します。プロジェクトを目標達成に向けて牽引するために、プロジェクトマネジメントのスキルは非常に重要です。プロジェクトマネジメントスキルを身に付けるためには、リーダーシップはもちろん、コミュニケーションスキルやスケジュール管理能力、リスクへの対応力などが必要になります。加えて、プロジェクトマネージャーとして適切な指示を下すために、担当するプロジェクトに関連したさまざまな知識や情報を収集しておくことも大切です。
テクニカルスキルとは、業務上で必要となる専門的技術のことです。近年ではマネージャーの立場でも、現場業務を兼任するケースが多くあるため、テクニカルスキルを身に付けることが求められます。テクニカルスキルはハードスキルの一種であるため、必要な教材を読みこんだり第三者からの指導を得たりすることで、意図的に身に付けやすいスキルです。そのため、マネジメントスキルを習得するにはまず、テクニカルスキルの向上を目指してみるとよいかもしれません。
テクニカルスキルの習得には、学習サービスの利用がおすすめです。特に、動画形式のコンテンツであれば、隙間時間に学習できるため、普段はなかなか業務が忙しく、まとまった学習時間が確保できないという方にも向いています。何から始めればよいか分からないという方には、『PERSOL MIRAIZ』の学習コースがおすすめです。キャリアの選択肢を広げるオリジナルコースを無料でご提供しています。※ご利用には無料登録が必要です。
カッツ・モデルとは、アメリカの経営学者ロバート・L・カッツが、役職ごとに身に付けるべき能力をテクニカルスキル(専門能力)、ヒューマンスキル(対人関係能力・人間理解能力)、コンセプチュアルスキル(概念化能力)の3つに分類した理論です。この3つのスキルは、どれもマネジメントを行う管理職には欠かせません。それぞれのスキルを構成する具体的な能力の例は以下の通りです。
テクニカルスキル (専門能力) | ヒューマンスキル (対人関係能力・人間理解能力) | コンセプチュアルスキル (概念化能力) |
・情報収集スキル ・分析スキル ・資料作成スキル ・パソコンスキル など | ・コミュニケーションスキル ・プレゼンテーションスキル ・交渉スキル ・マネジメントスキル ・ヒアリングスキル など | ・ロジカルシンキング (論理的思考) ・クリティカルシンキング (批判的思考) ・ラテラルシンキング (水平思考) ・問題解決スキル など |
カッツ・モデルや上記のスキルについてもっと詳しく知りたいという方は、ぜひ以下の記事をご参照ください。
カッツ・モデルでは、企業組織におけるマネジメントの役職を、経営クラスを示すトップマネジメント層(社長や役員など)、中間管理職クラスを示すミドルマネジメント層(部長や課長など)、管理職ではないが組織の統括に携わるロワーマネジメント層(主任やチームリーダーなど)の3つに分類しています。そして、このような役職の階層に応じて、上記でご紹介した3つのスキルを身に付けるべき比率は異なると定義しています。その比率の違いは以下の図のようになります。
ぜひこの図を参考にして、現在就いている役職より1つ上のマネジメント層に昇格するためには、どのスキルを重点的に鍛えればよいのか見極めてみてください。
今回は、管理職やマネージャーといった役職に就くために必須なマネジメントスキルについて、必要なスキルの具体例やその身に付け方などをご紹介してきました。昇格や昇給を目指したり、理想のキャリアを考えるなかで、いずれはこうした管理職に就きたいと考えている方も多くいると思います。そのような方々は、ぜひ今回ご紹介した内容を参考にして、ご自身のマネジメントスキルの強化に活かしてみてください。
また、マネジメントスキルはご紹介した通り必要なスキルの幅が広く、そのどれもが一朝一夕で身に付くものではありません。特に、リーダーシップや、コミュニケーションスキルといったソフトスキルは、日々の経験によって鍛えられる能力です。
そこで、自らリーダーに立候補したり、会議のファシリテーターを務めたりと、マネジメントスキルの習得につながりそうな機会を自分で作ることがおすすめです。ほかには、尊敬する上司や先輩の仕事ぶりを観察してお手本にしたり、自身の仕事について周囲からフィードバックをもらったりするのもよいでしょう。
管理職に就くことは、社内でのキャリアの転機をもたらすだけでなく、自身の市場価値を高め、転職を有利に進められる可能性にもつながります。そこで、若手のうちから前向きにマネジメントスキルの強化に取り組み、自身のキャリアを理想のものへと近づけていきましょう。
『PERSOL MIRAIZ』は、はたらくすべての人が利用できる無料のリスキリングサービスです。本来は高額なスキルの学習やキャリアカウンセリングを、誰でも気軽に始められます。
さん
一般社団法人ジャパン・リスキリング・イニシアチブ 代表理事 チーフ・リスキリング・オフィサー / SkyHive Technologies 日本代表
早稲田大学政治経済学部卒業後、1995年に富士銀行(現みずほ銀行)入行。2002年、グローバル人材育成を行うスタートアップをNYにて起業。2011年、米国の社会起業家支援NPOアショカの日本法人設立に尽力。2021年、日本初のリスキリングに特化した非営利団体、一般社団法人ジャパン・リスキリング・イニシアチブを設立。日本全国にリスキリングの成果をもたらすべく、政府、自治体向けの政策提言および企業向けのリスキリング導入支援を行う。著書『自分のスキルをアップデートし続ける「リスキリング」』(日本能率協会マネジメントセンター)は「読者が選ぶビジネス書グランプリ2023」イノベーター部門賞を受賞。2023年9月に続編『新しいスキルで自分の未来を創る「リスキリング実践編」』を上梓。
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