2024/04/22
DXとはデータとデジタル技術を活用して、製品やサービス、ビジネスモデルを変革させ、組織全体の変革や価値創造を目指すものです。この記事ではDXの意味や求められる理由、DX人材に必要なスキルなどについて解説します。
ビジネスや生活の場面で、DXという言葉を耳にしたことがある方は多いでしょう。少子高齢化やIT技術の発達により注目されていましたが、新型コロナウイルス感染症の影響から、さらに注目を集めています。しかしDXとはよく聞くものの、何のことなのかよく分からないという方もいるのではないでしょうか?
この記事では、DXの意味や今注目されている理由、DX人材に必要なスキルなどについて解説します。
まずは定義から見ていきましょう。DXとはデジタルトランスフォーメーションの略で、2004年にエリック・ストルターマン氏(当時スウェーデンのウメオ大学教授)が提唱した概念といわれています。トランスフォーメーションは「変化、変形、変容」などの意味を持ち、ストルターマン氏の「IT(情報技術)の浸透が、人々の生活をあらゆる面で良い方向に変化させる」※1という考えから、この単語が使われています。
経済産業省の発表したデジタルガバナンス・コード2.0によると、次のように定義されています。
「企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること。」※2
すなわち簡単に要約すると、DXはIT(情報技術)やツールを活用して、サービスやビジネスモデルをよりよいものに変革しながら、業務だけでなく、組織全体を変革し、他社より儲かる仕組みをつくることです。
※1 出典「デジタル・トランスフォーメーション」DXとは何か? IT化とはどこが違うのか?」(経済産業省)
※2 出典「デジタルガバナンス・コード2.0」(経済産業省)
では、なぜDXの推進が求められているのでしょうか?その大きな理由としては目まぐるしく変化する社会状況に対応するためということが挙げられます。IT技術が発達し、多くの企業がサービスの変革や製品の改善を行っており、それに伴い顧客ニーズも常に変化し続けています。そのため現代のビジネスにおいて、顧客のニーズに応え、企業の競争力を高めるには、DXの推進が必要不可欠なのです。
またDXが必要な理由として、2025年の崖問題も挙げられます。2025年の崖問題とは、このままDXが推進されない状態で2025年を迎えると、最大12兆円の経済的損失が生じる可能性があるという問題で、経済産業省が公表している「DXレポート~ITシステム「2025年の崖」の克服とDXの本格的な展開~」において記載されています。経済損失を回避するためにもDX推進は必要不可欠といえます。
また、情報処理推進機構の公表しているDX白書2023によると、DX推進に必要な人材の「量」や「質」が不足していることが明らかになっています。DXに取り組む企業が増え、DX人材に対するニーズが高まっている一方で、DXを推進できる人材が不足しているのです。
このような状況を踏まえ、リスキリングの重要性が高まっています。リスキリングとは、新しい業務や職業に就くために、今の仕事とは異なる領域や職種のスキルを身に付けることです。リスキリングに取り組み、DX人材へと移行することが注目されているのです。リスキリングについてより詳しく知りたいという方は以下の記事をご覧ください。
DXと似た言葉で、IT化やデジタル化といった言葉があります。それぞれどのような違いがあるか見ていきましょう。
IT(Information Technology)化とは、既存の業務プロセスは維持したまま、AIやIT技術を活用して、今までの業務をより効率化させるということです。DXとIT化の違いはその目的です。IT化の最大の目的は技術の導入による業務の効率化や生産性の向上ですが、DXは業務だけでなく、組織全体を変革し、競争力を向上させることが目的です。その点で、DXとIT化には明確な違いがあります。
IT化による業務効率の改善が、組織の変革にもつながるという点では、IT化はDX推進のための1つの手段ともいえるでしょう。
デジタル化とは、名前の通りアナログなものをデジタルに置き換えていくことです。デジタル化には、デジタイゼーションとデジタライゼーションの2種類があります。
たとえば、契約書類が電子化したり、対面で実施していた会議がオンライン会議になったり、電話やFAXでのやりとりがメールになったりなどが挙げられます。デジタル化の目的は、IT化と同様、データや業務をデジタルに置き換えることで、業務の効率化や負担を削減することです。一方で、DXの目的は業務に留まらない、組織全体の変革と競争力の向上であるため、デジタル化はDX推進の一部として捉えることができます。
DX推進のために活用するデジタル技術にはどのようなものがあるのでしょうか?ここでは代表的な以下の4つの技術について簡単に解説していきます。
AIは人工知能(Artificial Intelligence)の略であり、DX推進に欠かせないデジタル技術の1つです。AIによって業務や問題解決が自動化され、人員削減や生産効率の向上などが期待できます。また機械学習やディープラーニングによって、人間が行うよりも正確な作業が可能になります。
ビッグデータとは、要素が複雑で、解析が困難なほどに膨大な量のデータのことです。ビッグデータに含まれるデータ形式は、画像や音声、動画などさまざまで、個人情報も含まれます。ビッグデータを解析することで、データの相関関係や消費者傾向など、ビジネスに有益な情報が得られることが期待できるだけでなく、解析結果からサービスの改善をしたり、企業の新たな意思決定をサポートしたりすることもできます。
クラウドはクラウドコンピューティングの略称です。総務省によると、「インターネット上のネットワーク、サーバ、ストレージ、アプリケーション、サービスなどを共有化して、サービス提供事業者が、利用者に容易に利用可能とするモデル」※3と定義されており、インターネット上にある膨大な量の情報をしまっておく倉庫のようなものとして捉えることができます。クラウド上にある情報はどこからでもアクセスができ、共有も簡単なため、効率化やコスト削減に必要不可欠な技術です。
※3 出典「国民のためのサイバーセキュリティサイト| 用語辞典(か行)」(総務省)
Internet of Thingsの略称で「モノがインターネットにつながること」を指します。モノをインターネットにつなげることで、モノの状況をリアルタイムで知ることが可能です。たとえば、工場生産のプロセスにおいて、異常事態や機械トラブルをリアルタイムで検知できたり、商品にセンサーやマイクロチップを装着することで、データを蓄積し分析できたりするといった活用ができます。
ここまでDXの定義についてお伝えしてきましたが、実際にどのようなDXの事例があるのでしょうか?以下では、金融業界と医療業界、製造業界について、事例をご紹介します。
金融業界はほかの業界とも比較してDXが浸透しています。特に金融業界の多くの企業でクラウドの導入が進んでいます。サーバやシステム環境をクラウドに置き換えることで、コストを抑えることができ、効率的にデータを管理できたり、融資のプロセスの時間を削減できたりと、クラウド導入によるメリットはさまざまです。
加えて、AIの導入によって業務の効率化を図る事例もあります。たとえば、チャットボットの導入による顧客対応・問い合わせの自動化や、AIによる迅速なビッグデータ分析など、DXがさまざまな形で進められています。
医療業界のDX事例としては、オンライン診療が挙げられます。DXが進む病院では、診療ツールやスマートフォンアプリを導入し、診察日の予約や決済がオンラインでできるようにしています。こうすることで、病院にとっては受付業務の負担を削減でき、患者にとってはいつでも予約ができたり支払いの待ち時間が減ったりと利便性が高まります。
また新型コロナウイルス感染症の感染拡大によって、ビデオ通話での診察や、問診票をメールやチャットで送ったりすることも普及しました。処方薬は郵送もできるため、在宅で完結するオンライン診療も普及しつつあります。
また、AIの技術が向上すれば、AIを利用した自動問診ができる可能性もあります。AIがそれぞれの患者に適した質問を作成し、病気や対処法、処方薬を判断できるようになるかもしれません。
製造業界はDXによるメリットが大きい業界です。ロボットやAIの導入による生産性の向上や効率化、人件費削減などさまざまな恩恵があります。加えて特にIoT技術を活かすことができれば、工場の機械の一元管理や、生産段階の見える化が実現でき、異常やトラブルを把握しやすく、迅速な対応が可能になります。DXによって製造業界は多くの変革をし、新たな価値を創出できるでしょう。
ここまでお伝えしてきた通り、多くの企業がDXの推進に注力しており、DX人材を求めています。DX人材とはDXを推進するために必要なスキルを兼ね備えた人材のことです。DX人材に求められるスキルはさまざまですが、今回は下記3つを紹介します。
DXを推進するにあたってIT技術やデジタル技術に関する基礎知識は必要不可欠です。課題を発見できたとしても、IT分野の知識がなければ、課題解決のためにIT技術をどのように導入すればよいのか分かりません。また、エンジニアやプログラマーといった技術職でなくても、IT分野に関する知識はDXを推進するうえでの共通言語となります。基礎知識に加え、日ごろから最新情報を追って、定期的に知識をアップデートする姿勢も重要です。
データサイエンスとは数学や統計学、AIなどを活用して、大量のデータの分析や解析を行い、有益な洞察結果を導く学問です。なぜDXにおいてデータサイエンスに関する知識が必要かというと、DXはデータを分析し、その結果を踏まえて課題を特定したり、次の意思決定を行ったりするからです。たとえば、PythonやRといったプログラミング言語のスキルがあると、ビッグデータから課題を発見したり、具体的な策を生み出したりすることができます。
プロジェクトマネジメントスキルとは、プロジェクトを完遂するために、予算や人員、スケジュールなどを管理するスキルです。DXは大きな変革だからこそ、さまざまな人と関わり、巻き込んでいく必要があります。そのためには、コミュニケーション能力や協調性が必要であり、それに加えてプロジェクトのスケジュールや進捗、予算やリソースを管理するスキルも必要でしょう。
DX人材に必要な具体的なスキルは、経済産業省が策定したデジタルスキル標準で知ることができます。デジタルスキル標準には、DXに必要な能力やスキルの習得のための指針や、DX人材を育成するための指針が示されています。
デジタルスキル標準は、大きく2種類の指針から構成されています。
DX人材として活躍したいけれど、何を学べばよいか分からないという方は一度参考にしてみるとよいでしょう。
ここまでDXについて解説してきました。お伝えしてきた通り、DXの目的は、IT技術の導入によって、業務の効率化だけでなく組織全体を変革し、競争力を向上させることです。目まぐるしく変化する現代において、企業の競争力を上げるためには、DXの推進が必要不可欠であり、DX人材の需要もDX推進に比例して高まっています。
DX人材になるためにはさまざまなスキルが必要ですが、DX人材のニーズが高まっている今、DXに関わるスキルを身に付けることで、今後のキャリアの選択肢は広がるといえます。今の仕事やこれまでの経験にとらわれず、リスキリングに取り組み、新しいスキルの獲得にチャレンジしましょう。
『PERSOL MIRAIZ』は、はたらくすべての人が利用できる無料のリスキリングサービスです。本来は高額なスキルの学習やキャリアカウンセリングを、誰でも気軽に始められます。
さん
一般社団法人ジャパン・リスキリング・イニシアチブ 代表理事 チーフ・リスキリング・オフィサー / SkyHive Technologies 日本代表
早稲田大学政治経済学部卒業後、1995年に富士銀行(現みずほ銀行)入行。2002年、グローバル人材育成を行うスタートアップをNYにて起業。2011年、米国の社会起業家支援NPOアショカの日本法人設立に尽力。2021年、日本初のリスキリングに特化した非営利団体、一般社団法人ジャパン・リスキリング・イニシアチブを設立。日本全国にリスキリングの成果をもたらすべく、政府、自治体向けの政策提言および企業向けのリスキリング導入支援を行う。著書『自分のスキルをアップデートし続ける「リスキリング」』(日本能率協会マネジメントセンター)は「読者が選ぶビジネス書グランプリ2023」イノベーター部門賞を受賞。2023年9月に続編『新しいスキルで自分の未来を創る「リスキリング実践編」』を上梓。
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