2024/05/23
スキルセットとは、業務に即した必要な技術や知識、経験の組み合わせのことです。そのため、求められるスキルセットの内容は職種ごとに異なります。今回の記事では、スキルセットの意味やその身に付け方、職種別に必要なスキルの一覧などについて詳しくご紹介します。
スキルセットとは、業務に即した必要な技術や知識、経験の組み合わせを指します。そのため、求められるスキルセットの内容は職種ごとに違いがあります。また、スキルがある特定の能力を指すのに対し、スキルセットは能力単体ではなく、その組み合わせを指す用語であるため混同しないようにしましょう。
個人に求められるスキルセットの内容は、時代やビジネス情勢の影響を受けて常に変化しています。特に昨今では、テクノロジーの目覚ましい発達やDXの推進によって、必要とされるスキルセットも以前とは大きく変化しつつあるため、自身のスキルを常にアップデートしていくというマインドセットも必要です。
また、AIをはじめとしたテクノロジーの進展により、スキルセットの内容だけでなく、職種の在り方自体も変わっていく可能性があります。世界経済フォーラムによって2023年4月30日に発行された「仕事の未来レポート2023」では、「2027年までに約23%の仕事が変化し、6,900万件の新たな仕事が創出、8,300万件の仕事が失われる」と予測されています。※1 今の仕事がこの先も同じように在り続けるとは限らないのです。だからこそ、現職のスキルアップだけでなく、異なる職種や領域のスキルに目を向け、リスキリングに取り組むことも重要です。リスキリングについて詳しく知りたい方は以下の記事をご参照ください。
※1 出典:「仕事の未来レポート2023(The Future of Jobs Report 2023)」(The World Economic Forum)
(最終確認日:2024年11月6日)
スキルは、ソフトスキルとハードスキルの2つに分けることが可能です。職種に関わらず、スキルセットには多くの場合、ソフトスキルとハードスキルの双方が含まれます。また、コアスキルとスペシャルスキルというスキルの分類も可能です。ここでは、それぞれのスキルについてご紹介します。
▼スキルの分類の仕方1(ソフトスキルとハードスキル)
ソフトスキル | ハードスキル |
あらゆる業務でベースとなる能力 (コミュニケーション力、時間管理能力など) | 特定の職種で身に付ける専門的な技術 (プログラミングスキル、語学力など) |
▼スキルの分類の仕方2(コアスキルとスペシャルスキル)
コアスキル | スペシャルスキル |
どの職種でも汎用的に使えるスキル (基礎学力、一般常識など) | 限られた職種で活用できる専門的スキル (営業力、会計知識など) |
ソフトスキルとはあらゆる業務を遂行する際に、共通してベースとなる能力のことです。なお、ソフトスキルのなかには、どのような環境でも有用なポータブルスキルとして位置付けられるものもあります。ソフトスキルの具体例は以下の通りです。
ソフトスキルは、後にご紹介するハードスキルとは異なり、教材や第三者の指導だけでなく、日々の経験を通じて培われるものもあります。
ハードスキルとは、職種ごとに求められる専門的な知識や技術のことで、テクニカルスキルとも呼ばれます。ハードスキルは、客観的に評価したり、習熟度を数値化したりしやすいという特徴があります。資格取得のように専用の学習を行ったり、特定の経験を積んだりすることで身に付けやすいため、ソフトスキルと比較すると、習得するまでのプロセスがイメージしやすい能力です。ハードスキルの具体例としては以下が挙げられます。
コアスキルとは、どのような職種においても汎用的に活用できるスキルのことです。ソフトスキルと重なる点も多く、社会人に必要な基礎的なスキルがコアスキルとして扱われます。コアスキルの具体例としては以下が挙げられます。
スペシャルスキルとは、専門知識や技術のことで、活用できる業種や職種が限られるスキルです。基礎的なスキルであるコアスキルと異なり、仕事や学習を通じて身に付けていくような、特定の仕事の遂行に必要なスキルを指します。スペシャルスキルの具体例としては以下が挙げられます。
ビジネスパーソンに共通して求められるスキルセットは、主に以下の4つです。
職種ごとのスキルセットを身に付ける前に、まずはこれらの基礎的なスキルセットの習得を目指すとよいでしょう。以下で、それぞれの内容について詳しくご紹介していきます。
基本スキルセットに含まれるスキルの例は以下の通りです。
このほかに、上司や取引先に対する言葉遣い・名刺の渡し方といったビジネスマナーも基本スキルセットに含まれます。これらのスキルはどれも初歩的ですが、社会人経験を重ねても、きちんと身に付けられているか振り返ることが大切です。また、基本スキルセットに含まれるスキルは新人研修で教わることが多いため、若手のビジネスパーソンは新人のうちにこのスキルセットのマスターを目指すとよいでしょう。
対課題スキルセットに含まれるスキルの例は以下の通りです。
対課題スキルセットは、基本スキルセットと比較するとやや難易度の高いスキルといえます。また、マネジメント能力や戦略立案能力といったスキルも含むため、比較的高いポジションの役職に就いている方は、特に重視すべきスキルセットです。
対人スキルセットに含まれるスキルの例は以下の通りです。
ビジネスシーンにはさまざまなステークホルダーが関わるため、良好な人間関係を築き、ビジネスを円滑に進めるためにも対人スキルセットの強化は重要です。また、座学よりも実践を通じて身に付くスキルが多いため、対人スキルセットを磨きたい方は、実践する機会を見つけて積極的に取り組むとよいでしょう。
セルフマネジメントとは、具体的に以下のようなスキルを指します。
これらのスキルは、業務に直接的に関わるスキルではない分、ほかのスキルと比較すると重要視されないことがあるかもしれません。しかし、セルフマネジメントが不足していると、心身の不調を招き、業務に支障を来す恐れがあります。高いパフォーマンスを維持できるよう自己管理するのも仕事のうちなので、日頃の生活習慣を見直したり、自分なりのストレス解消法を見つけたりすることで、これらのスキルを身に付けましょう。
先述したように、スキルセットとはそれぞれの業務に必要な技術や知識、経験の組み合わせであり、求められるスキルセットの内容は職種ごとに異なります。ここでは、それぞれの職種で必要となるスキルセットの例をご紹介しましょう。
エンジニア職に求められるスキルセットは、下記のようなものが挙げられます。
エンジニアには、システムエンジニアやWebエンジニア、サーバーエンジニア などさまざまな種類が存在します。よって、専門的な技術や知識にあたるハードスキルに関しては、上記でご紹介したスキルが必ずしも必要になるとは限らないうえ、職種によっては上記以外のスキルが必要となる場合もあるでしょう。
また、エンジニアは変化の目まぐるしいIT分野の職種なので、スキルのアップデートが常時求められます。常に最新情報を知り、技術を磨き続ける姿勢も重要でしょう。
Webデザイナー・グラフィックデザイナーに求められるスキルは主に以下の通りです。
デザインスキルに関しては、生まれ持ったセンスで決まると思われがちですが、デザインにも法則や理論が存在するため、学習をすることで身に付けることが可能です。また、アーティストとは異なり、ユーザーの行動を喚起する(購入につなげる)視点が求められるため、Webマーケティングのスキルも必要です。
営業に求められるスキルは、主に以下の通りです。
営業職で求められるスキルは、ほかの職種と比較するとソフトスキルが多い点が特徴です。そのため、営業スキルの向上には、顧客を理解しようと積極的にコミュニケーションを取ってヒアリングをしたり、資料を作成して交渉・提案を行ったりするなど、実践的な経験を積むことが効果 的です。
マーケターに求められるスキルは、主に以下の通りです。
マーケティングは、マスマーケティングやデジタルマーケティング、SNSマーケティングといったように、さまざまな種類・粒度に分類できます。そのため、仕事内容によってマーケティング職に必要な知識やスキルは変わりますが、上記に挙げられるスキルは共通して必要となる場合が多いでしょう。
また、現在はWeb媒体を使用したマーケティングが主流であるため、基礎的なWeb知識も身に付けておく必要があります。さらに、マーケティングの在り方は人々の生活や価値観の変化、テクノロジーの発展とともに常に変化しているため、最新情報を追いかけてスキルをアップデートする力も必要不可欠です。
人事に求められるスキルは、主に以下の通りです。
人事の業務では、複数の部署の担当者と関わる機会が多いため、対人スキルが必要です。高度なコミュニケーションスキルやヒアリング力などを含む対人スキルを身に付けるメリットとして、各部署の社員から情報を収集しやすくなり、組織の課題把握が容易になる点が挙げられます。それに加えて、課題・経営状況に合わせて適切に人材を採用・配置するマネジメント能力や課題解決能力、人事戦略の立案能力を身に付けることも重要なポイントです。
また、時代の変化に合わせたDX戦略を導入するために、ツールの使い方やデータベースの構築について学ぶといったような、人事戦略を目的としたリスキリングが必要になることもあります。
経営者に求められるスキルは、主に以下の通りです。
経営者は、目標に向かって従業員を率いる立場であるため、リーダーシップが重要です。また、経営者は事業方針の策定や今後を左右する重大な決定をすることもあるため、決断力や判断力に加え、先を見通す洞察力が役に立ちます。
なお、専門的なスキルとしては、経営に関連する会計や法務の知識が必要です。
コンサルタント職に求められるスキルは、主に以下の通りです。
基本的に、コンサルタントには、プロジェクトの目的達成に向けた計画・調整を行うマネジメント力や、課題解決に役立つロジカルシンキングの力が必要です。また、市場の動向や、クライアント・競合の情報などを得るためにリサーチ力も求められます。
スキルセットを高める方法はさまざまありますが、ここでは下記5つをご紹介します。
また、スキルアップについては、別の記事で詳しくご紹介しているので、ぜひ併せてご覧ください。
スキルセットを向上させる際はまず、これまでの自身の経験を振り返り、既に習得済みのスキルとこれから習得する必要のあるスキルの整理を行いましょう。その際、これまで取り組んできた業務において自身が工夫した点や苦労した点を書き出すと、その仕事経験から得たスキルと今後獲得していくべきスキルがよりイメージしやすくなります。また、こうしたスキルの棚卸しをプロジェクトが一段落するごとに行えば、自身の成長を実感しやすくなり、モチベーションの向上にもつながるでしょう。
目標を達成できたか否かは、スキルの習得度を測るための指標となります。ハードスキルであれば、資格取得を目標にするのがおすすめです。ソフトスキルの場合は、数値化して評価することが難しく、資格制度がないケースも多いため、日々の行動目標を立てるのがよいでしょう。
たとえば、リーダーシップを磨くためにチームを先導することを意識したり、コミュニケーションスキルを磨くために会議中に積極的な発言や質問をすることを意識したりする、といった具合です。先述したようにソフトスキルは、日々の経験を通じて培われるものが多いため、このように日頃から小さな目標を立ててその実践を積み重ねることが、スキル強化に役立ちます。
会社によっては、従業員を育成するために研修制度や教育制度を設けている場合があります。特に昨今はDXやテクノロジーの発展に対応し、企業の競争力を強化するために、従業員のリスキリング支援に取り組む企業もあります。習得したいスキルがある場合は、自分の勤めている会社でそのような制度がないか一度調べてみるとよいでしょう。
上記でご紹介したような制度が自社に備わっていないという方は、書籍や動画・学習サービスを通して独学しましょう。特に、動画形式の学習サービスであれば、通勤時間や昼休憩などの隙間時間を使って学びやすいので、普段の業務が忙しくまとまった学習時間を確保しにくい方でもスキルの習得を目指せます。また、時間がある場合は、外部で実施しているセミナーに参加することも効果的でしょう。
何から始めればよいか分からないという方には、『PERSOL MIRAIZ』の学習コースがおすすめです。キャリアの選択肢を広げるオリジナルコースを無料でご提供しています。※ご利用には無料登録が必要です。
近年は、就職後も就労と学びを交互に繰り返すリカレント教育をはじめとした、社会人の学びの重要性が頻繁に提唱されるようになったこともあり、ビジネススクールに通う人が増えています。ビジネススクールでは、プロの講師から知識やスキルを体系的に学ぶことができ、修了すれば履歴書にも書けることが魅力です。一方で、コースによっては修了までに1~2年を要し、費用も高額になる場合があります。経済的負担を懸念する場合は、まずは前述したような無料の学習コンテンツから始めてみるとよいでしょう。
ここまで、スキルセットの種類やその身に付け方について解説してきました。冒頭でもご紹介したように、今後はAIをはじめとした技術の進展によって、今はない新しい職種が生まれたり、逆に人間の役割ではなくなったりする職種もあるだろうと予測されています。だからこそ、自分の今の職種に限らず、スキルをアップデートし続けることが大切です。将来どのような仕事をしたいか、どのような働き方をしたいかという未来も考えながら、今回ご紹介した内容を参考にして、ぜひ前向きにスキルの習得に励んでみてください。
『PERSOL MIRAIZ』は、はたらくすべての人が利用できる無料のリスキリングサービスです。本来は高額なスキルの学習やキャリアカウンセリングを、誰でも気軽に始められます。
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一般社団法人ジャパン・リスキリング・イニシアチブ 代表理事 チーフ・リスキリング・オフィサー / SkyHive Technologies 日本代表
早稲田大学政治経済学部卒業後、1995年に富士銀行(現みずほ銀行)入行。2002年、グローバル人材育成を行うスタートアップをNYにて起業。2011年、米国の社会起業家支援NPOアショカの日本法人設立に尽力。2021年、日本初のリスキリングに特化した非営利団体、一般社団法人ジャパン・リスキリング・イニシアチブを設立。日本全国にリスキリングの成果をもたらすべく、政府、自治体向けの政策提言および企業向けのリスキリング導入支援を行う。著書『自分のスキルをアップデートし続ける「リスキリング」』(日本能率協会マネジメントセンター)は「読者が選ぶビジネス書グランプリ2023」イノベーター部門賞を受賞。2023年9月に続編『新しいスキルで自分の未来を創る「リスキリング実践編」』を上梓。
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